俳句月報 8月号

◆今月の吟行・しながわ水族館と高山神社 2016・7・2

●俳句として詠むには、大変難しい場所でした。それをどうこなすのか、それが問われます。 目の前の状況に目を奪われてしまうことなく。

 

●「ボツ」相当の句がありますが、そのまま載せています。

 

●その中で、注目句を赤で選んでいます。

収穫です。

 

●次回には、また、このよう俳句表現では難しい場所に敢えて挑戦してみましょう。         

 

●美辞麗句は、どんな時でも俳句には不要です。

 

 

作品抄

 

         
七月のアクアパークへ仲間たち  イカ
七月や女のいるか調教師
梅雨曇宇迦御魂はビルの間
隠れ耶蘇石灯籠や木下闇
ハンブルグステーキ梅雨の仕舞とも
          


夏の日の水族館の迷路抜け    オミ    

夏の日の海豚のショーや梅雨晴間
海月には海月の魅力涼しかり

合羽着て暑さ忘れる海豚ショー
夏帽子グリルつばめはすぐそこに
         


炎天やビルの谷間の水族館    ミノ
冷房の水族館の親子づれ
大都会の小さな社殿立葵
夏帽子みなそれぞれに個性持つ
夏服をひらひらひらと女子の行く
         


雑踏の改札抜ける炎ゆる道    イア
半夏の日水族館に来ておれる
狛犬に慶応とあり木槿咲く
海豚ショー待つ空席の夏帽子
炎昼の横断歩道急ぎ足
         


駅中の夏物セール見て過ぎる   チシ
水しぶき浴びる席にて海豚ショー
駅前に神社まします青葉風
梅雨晴間グリルつばめの予約席
人波を分けて炎天歩きゐる
          


イルカショー調教の娘の夏袴   シミ
炎天やアクアパークは竜宮城
東京の夏日忘るる水族館
品川の海は遠くへ夏帽子
三階の高さ泰山木の花
          


水槽をのぞき見ているこども汗  ハセ

夏の昼ロールキャベツを食べにけり
黒の絽の道行き着たる漢過ぎる
尾で水を叩き涼しきイルカショー
尾鰭にて水を叩ける水遊び
          


半夏の日ショーの海豚の立泳ぎ  アヒ
水しぶき上げて涼しきイルカショー

夏帽子観覧席に置かれあり
赤鱏の腹の白さの翻る
予約席まづ「とりあへず生ビール」
          


渦を生み海豚涼しく回遊す    アノ
真白なる海月変幻乱舞かな
梅雨晴やアクアパークに人の波
変貌の街に立ち居る半夏の日
老若の声たて笑う夏のショー
          

山 田 南 耳
照明に海月の命踊りをり    ヤミ
水槽の頭上を鱏の動かざる
イルカショー終れば汗の吹き出て来
石仏のマリア像らし半夏生
その昔宿場町てふビール酌む
          

 

夏の日の水族館の闇にゐる  トンボ

炎天やAQUAPARKといふ館
冷房の館内戦ぐイルカショー
イルカショー待ちゐる開始汗拭ふ
国道も海も見下ろす木槿かな

◆今月の四苦八句

4✖9=36+8句=44

 

4✖9=36

8✖9=72

36+72=108

 

煩悩の数です

 

雑詠抄

 

堂々と現れ出し夏氷

一滴の滴連ねる夏氷

新宿の路地を駆け行く夏氷

水飯や辻褄合ふもあはずとも

人類の歴史と共にかたつむり

つかまへてすぐに手放すかたつむり

後悔の積もり積もれる蝸牛

かなぶんの観音様へ体当り

宝前やかなぶんぶんの転がれる

干しものを張り付きをれる黄金虫

端役とふ役の為所汗ぬぐふ

蟲干の形ばかりとなりにけり

風鈴や御大師さんの行脚像

図書館へ返す本あり大暑来る

むつくりと体を起こす大暑かな

往けば止み引けば鳴き出す行行子

点々とブルーハウスや行行子

白地もう着ることもなし日光下駄い

籐椅子を使つてをれば夕べくる

犬居れば人の集まる木下闇

夕蟬のやかましくもあり寂しくも

夕蟬や五木くづしの守子唄

硯洗ふ日なりし顔を洗ひ寝る

夏草や古戦場址の標石

夏草や大音声の車来る

夏負や豆腐の上の花かつを

神鳴や敬してみたり疎んだり

一歩踏むことの涼しや一歩踏む

ずぶぬれになりて楽しや大夕立

短夜も不平不満も明易し

身近なる未来の日々の明易し

待つたなしの仕事もたねど明易し

湯を浴びて胡坐をかけば夜の秋

夜の秋の欲しきは珈琲セレナーデ

木の膚に温みの残る夜の秋

大広間飛蝗追うには丁度よし

一口と云わずも茄子を頭から

鴫焼や父母無き日々のじわじわと

起重機もパワーショベルも夏休

向日葵の一本立てるトタン屋根

罪あると思はぬけれど毛虫焼く

また一人手を触れ去りし花氷

海中に都のあるぞ水中花

鍵かけていざ炎天へいでませる

鏡中の眉毛見てゐる不死男の忌

鐘の音のどこまで響く蟻地獄

蟻地獄両手に余る御宝前