今月の定例句会  2012・12・16

吟行 立石を歩く  2012・12・1  


当日の作品抄

 

葱一本借りを返して年用意     ヤミ

通夜の列しんがり冬の登山靴    ヤミ

なんとなく流れてをりぬ冬の河   チシ

一茶忌や故郷に別れのの峠あり   シケ

嫁と娘(こ)の師匠となりて年用意 イマ

冬虹や伊吹山麓古戦場       アノ

狐火を見に行くといふ蹤きにけり  イカ

十二月八日落語を聞いてをり    チシ

ハーモニカ習いて風邪を忘れけり  ハセ

愛日や源森橋へ枕橋        ヤミ  愛日は、あいじつ

冬座敷追い追い人の集まり来    ヤミ

運座とは近ごろ聞かず翁の忌    イカ

老いの身の薬寝ぐすりにら雑炊   シケ

雑炊を吹いてしづかに老いゆくか  ワユ

雑炊や板の間暗きわが生家     アノ

 

〔コメント〕

 

●この句を俳句の骨法にかなった句として推奨します。

   

 雑炊や板の間暗きわが生家

  

雑炊を頂きながら、過ごしてきた過去を振り返った句として鑑賞できます。この句にこの人の歴史が表現されているのですが、そしてそれは、鑑賞する読者がわが身に置き変えてわが人生を振り返り、共感できる表現となっているところが、俳句の表現として成功しているところです。俳句は、相手に伝えるべき、言外の言をたっぷり含んでいることが大切です。

 

 

●中村勘三郎の突然の死。これに応えて今月はそれを詠んだ句が投句されていました。

 

中村屋顔見世一輪散り惜しむ

親獅子の影ふっと消え冬扇

見上げれば親獅子渡る冬銀河

名優の死や顔見世の勘九郎

 

作者にとってそれだけ、惜しまれる死であったことは、これらからも想像されます。いつの日か、これらを超える句を期待しております。

 

●「冬扇」?

冬をつければ、冬の季語になると思っているのでしょうか?

なりません。これは、注意しなければならない大事なことです。

歳時記を見てみましょう。秋の所に、「秋扇」とあります。これは、

「秋になって使われなくなった扇。寵(ちょう)を失った女性のたとえ」

これには、故事があり、

《漢の宮女、班婕妤(はんしょうよ)が君寵を失った自分を秋の扇にたとえて詩を作った故事から》」そこから、男の愛を失って捨てられた女のたとえとして遣われています。

このようなことから季語となっています。

「歳時記」をよく見ましょう。

 

    

●「愛日」は、歳時記にある?

一部には、これを季語としているのかもしれませんが、多くは、季語として歳時記に載せていないでしょう。準季語といったところでしょう。いい例句が沢山出来てくれば、あるいは、大手を振って季語と云われるようになるかもしれません。何故か?

広辞苑」に

 

左伝(文公7年、注)「冬日愛すべく、夏日畏るべし」。冬のありがたい太陽。

 

このような出典がある故に。季語に昇格するのには、かなり難しい挑戦かな?

 

※左伝は、「春秋左氏伝」の略。五経の一つ、「春秋」の注釈書。

 

 

 

●分からない句がありました

 

下層の天まだ追われつつ師走かな

 

の句です。

 

互選では、この句に点が3点も入っています。分かっている人がいるようです。

 

 

 

 

当日作品

 

         
冬ざれや杭の残れる渡し址     イカ
手套脱ぐ祭神木花開耶姫
冬の日や立石さまは頭見せて
相輪を仰げば木の葉降ることよ
冬紅葉社務所の裏へまはりけり

         

落葉道熊野神社へ着きにけり    チシ
初時雨バス停までの急ぎ足
暮の街キューピー人形骨董店
冬ざれの水の匂へる 渡し跡
手套脱ぎ御朱印帳を頂きぬ

          
息白し酒屋百年四代目       シケ
凍て空を映し一川流れけり
ジョギングの人の揃いの冬帽子
冬うららきららの名あるポニー小屋
杭残る旧渡し場に浮寝鳥

         

水鳥の渡し場跡の塒かな      オミ
枯葦の渡し場跡や空青し
川添に祠の数多冬の空
八咫烏紋の神社や銀杏散る
立石を好きと思いつ落葉踏む

         
水面を高く中川冬ざるる      アノ
冬ぬくし渡し場跡の現れる
冬うらら川は蛇行すポンポン船
刃物屋の光る庖丁冬の朝
冬晴や町の角々地蔵尊

         

極月のシャッター開く骨董店    ヤミ
清明のゆかりの社冬すみれ
冬日さす熊野神社の古墳跡
冬鳥や八咫の烏の鳴くならむ
着ぶくれてシーソー遊び風の町

  
北風や左へおくどまがりがね    トンボ
北風を歩くは古代東海道
冬紅葉立石様の祠あり
霙来るシンフォーヒルズレストラン
神域の五角形なり冬木立

道標
道標
渡し場跡の杭
渡し場跡の杭
安倍清明の熊野神社
安倍清明の熊野神社
立石様
立石様