今月の句会報 2012・3月

  句会抄

野遊や秩父山寺一揆跡       チシ

雛飾る街に戴く接待茶       チシ

被災地の全山春を兆しけり       シケ

石積の町の塔頭朧かな       ミミ

蛇行する川辺の道や風光る       ヤミ

閏日を雪に降られてしまいけり       ハセ

葉牡丹の茎立父の忌なりけり       イカ

陽炎やマラソン走者揺れて来る       アノ

春寒し血縁淡くなりしかな       ワユ

晋山の手輿のすすむ揚雲雀       シケ

揚雲雀どこ迄続く草千里       イレ

ここからはお城の見えず揚雲雀       ミミ

矢切から渡し舟着く揚雲雀       スミ

妹の面影空に揚雲雀       ナミ

梅が香の垣に干さるる赤き靴       ハセ

 

今回は佳作が少なかったようです。

 

下記の句は、添削して採用しました。

 

・石積の町塔頭の朧かな

・陽炎やマラソン走者揺れており

・晋山の手輿を下に舞雲雀

・妹の面影空に雲雀上がる   

吟行句 2012・3月3日

茨城県桜川市・真壁のひな祭り

廃線のホーム短し桜の芽      イカ
公明は常陸の地酒雛まつり
メリンスをこの頃聞かず吊し雛
雛飾る勢州楼はむかしの名
梅林へバスは登りにかかりけり

         

山肌に石切り痕や霞おり      オミ     
廃線の停車場のあり長閑なり
震災の傷跡見せて雛祭
甘酒を振舞う店の奥に雛
春耕の筑波山麓静かなり

         

雛飾る町に足らふて遊びけり    チシ
手に触れてみたき雛の道具かな
古雛明治の匂ひ貰ひけり
筑波嶺の女体男体春がすみ
綿菓子のやうな雲ゆく雛の町

         

雛に会う人千人の歩みかな     シケ
立子の忌雛の里に着きにけり
古絵図の道そのままの雛の町
東風渡る海鼠瓦の城下町
雛の宿すいとん田楽ちらしずし

         

在りし日の母の笑顔やひなまつり   コフ
震災の痕跡残る雛の蔵
老梅の声なき声や老舗あり
休耕田茅花の群れておりにけり
田起こして筑波へ続く畝の数

        

筑波山加波山裾の雛の里        アノ
廃駅のプラットホーム草青む
雛の膳弥生の風と云えるなり
震災の傷まだ残る雛の里
店先に青筒挿せる猫柳

         

筑波嶺に雲低くあり春霞         アヒ
白梅や低き家並の鄙の里
町あげて賑はひをりぬ雛日和
振舞はれたるは白酒紙コップ
大ぶりな椀のすいとん掌のぬくし

         

甘酒も沢庵漬けも雛祭          オシ
筑波山加波山山頂霞をり
飾り雛見に来て覗くがらくた屋
雛の闇下駄の鼻緒を挿げてゐる
震災の被害見てゐる雛かな