今月の定例句会抄 2012・5月

表札の旧町名や燕の子      イカ

蕨餅売るは昨夜の子役かな      チト

山彦に続く山彦滴れる      ワユ

露天湯の若葉の影を掬いけり      シケ

滝落ちて緑の山を分かちけり      イマ

万緑と光分け合う東照宮      イマ

苫船の揺れて卯の花腐しかな      シケ

一両の列車映れる植田かな      シケ

糠床の塩足す卯の花腐しかな      チシ

 

今月は、不調だったようです。

 

 

 

 

旧安田楠雄邸

2012.5月4日 吟行             根津神社と旧安田楠雄邸

当日作品抄

 

朝戸出の雨来る気配花は葉に       イカ
桐の花こぼれて異人坂といふ
人増えてきし権現のつつじかな
公園は駅へ近道春落葉
財閥のゆかりの家の軒菖蒲

         

桐の花薄紫に異人坂           オミ
緑陰や根津権現の雨あがる
将軍の奉納神輿木下闇
躑躅咲く乙女稲荷の鈴の音
玻璃ガラス青葉若葉を写し居り

         

小手毬に触れて歩きぬ異人坂       チシ
雨あがる人の寄せ来る根津神社
厄除けの粽に人の列できる
濡れ縁に佇みをれり夏近し
菜種梅雨昏き公園抜けにけり

         

橡散るや坂の石垣苔生して        アノ
玉垣に八重垣町と白躑躅
軒菖蒲屋敷を守るボランティア
風薫る畳廊下の玻璃硝子
薫風や網代天井水屋かな

         

橡の花こぼるる雨後の異人坂       アヒ
雨上る旧家玄関軒菖蒲
風通る畳廊下や夏隣
二階より一望の庭緑さす
新緑や谷根千界隈雨走る

         

夏めくや葉をちらちらと透塀       ヤミ
厄除けの積まれて青き粽かな
初夏や風の通れるレストラン
雨音のやがて滝音樹々深く
講談社ありしと路地の柿落葉

         

雨上り人湧き出るつつじかな       トンボ
旧安田楠雄邸なる軒菖蒲
椎若葉名のみ残れり八重垣町
行く春の畳廊下を歩きゐる
松の花特養ホームありにけり