今月の定例句会 2012・8・26     吟行会は夏休み

  雑詠抄

鬼ヤンマみんな優等生でした        チト

秋蝉の声を絞りて閻魔堂          シケ

掃苔のそびらの老いを云はれけり      イカ

じやがいもにバター8月15日       イカ

鰻飯四十人の暑気払い           オミ

秋桜群れて居らねば淋しくて        アヒ

秋熱し俳句に力もらひけり         ワユ

高源の色なき風のレース店         アヒ

着物着る熱いでしょうと言われても     ハせ

七夕や者知りばかりの長寿会        スミ

処暑の湖波紋広がる通り雨         イレ

川越に来てゐて処暑の日なりけり      スミ

 

※今月は、季語の「盆の月」「葉月」などが話題になりました。

詳しくは、「あれこれ・あれ!これ?」を参照。

 

もうひとつ

こういう句がありました。

 

夏籠りの身のありがたくオリンピック

 

近ごろとんとお目にかかることのなかった季語「夏籠り」。普通は「夏籠」と書きます。

この季語は、歳時記を見れば分かりますが「げごもり」のことで、「夏安居(げあんご)」ともいいます。内容は歳時記で確認してみてください。

「夏籠」という文字を見つけてこれ幸いと遣ったようです。再起はよく読んで理解して遣いましょう。

 

◎初めての本格的俳句会小説としてかって話題になったものがあります。

『俳風三麗花』、著者は、三田 完というひとです。直木賞候補になったようにも記憶しております。

「とら、とら、とら」、「おんな天一坊」、「冬薔薇」、「艶書合」、「春の水」の五つの連作をまとめたものです。

蔵書は先年、すべて処分していますので図書館から借りて読みなおしています。

暮愁先生を中心としたこの句会の参加者と、句会でのやり取り。昨今の勉強会とは異なる俳句会の様子を楽しめます。

この俳句会の参加者の一人松太郎のことから始まる「おんな天一坊」は、次のように始まります。

 

 

秋の彼岸が過ぎれば、陽気もだいぶすごしやすくなる。

十月の暮愁庵句会のために、松太郎はふだんお座敷で着ることのない無地の袖に袖を通すこと

にした。

「あんたみたいな若い娘は、かえってそういう地味な着物のほうが映えるねえ」

女将が松太郎を眺め、ほれぼれといった。

「あ、いけない」

松太郎は部屋にもどり、箪笥にしまってあった畳紙を取りだした。

「じゃ、女将さん、行ってまいります」

「ちょいとお待ちな」

今度は女将がいったん奥に引っこみ、すぐに勝手ロにもどってきた。

「句会で好い成績がとれますように」

女将が両手をさしのべ、カチカチと火を切る。こうべを垂れた松太郎の胸に熱いものが溢れた。

下町の通りには、どの軒先にも菊の鉢植えが並んでいる。浅草寺境内の菊供養も間近だ。

ついこのあいだの十月一日、それまで十五の区に分かれていた東京市が近隣の郡部八十二町村

を吸収し、計三十五区からなる新しい市に生まれかわった。結果、市の人口は五百五十万人とな

り、東京は住民数においてニューヨークにつぐ世界第二位の巨大都市となった。

〈祝大東京市誕生〉

いま、市中のいたるところに提灯や幟が飾られ、造花できらびやかに彩られた花電車が目抜き

通りを行き果している。于供たちは歓声をあげて花電車を追いかけ、制止する巡査のけたたまし

い笛の音があちこちで深秋の空気をつらぬく。

 

話はどう展開?。俳句会の様子はどうなるでしょうか?

続きは同書で確かめください。