今月の定例句会  2012・9月

 

 木歩忌の懐紙に包む金平糖       チト

  生姜市和紙の小物を商ふ灯           チト

  オカリナを吹ける老人草の花           ワユ

  秋の雲頬杖ついて居るばかり           ヤミ

  秋草を活けてみたらし団子買ふ         イケ

  強情な残暑に敗けてしまひけり         チシ

  生き生きと町の長老秋祭             オミ

  決壊の土手は昔や野分雲            アノ

  秋灯や何でもない字すぐ書けぬ        ワユ

  仲見世に人待ちをれば夜這星         スミ

  秋の蟬搦目手門の址とのみ          イカ

  花野来てサイクリングの日の暮るる      スミ

  金婚や夫と来て立つ大花野           イレ

  花野ゆく今日の一日ありがとう         チシ

  花野来てトラピスチヌス修道院         イカ

 

※上の句の内、「オカリナ」、「秋灯や」の句の原句は、

 

  オカリナを吹く老人や草の花

 

※上の句の内、「オカリナ」、「秋灯や」の句の原句は、

 

  オカリナを吹く老人や草の花

 

  秋灯や何でもない字すぐ忘れ

 

でした。いずれも事柄の報告になっていますので、上記のように添削しています。

 

また、同じ作者に

 

  爽やかに朝のあいさつ杖と杖

 

が、ありました。この句を見るとかの有名な「朝顔に釣瓶取られて貰ひ水」の句を思い出します。これは、

  

  朝顔や釣瓶取られて貰ひ水

  

  爽やかや朝のあいさつ杖と杖

  

とするのが俳句の表現です。何度も言っていることですが、なかなか理解されていないようですね。

 

上五は「や」で区切っていますので、その場の情景となり、次の、中七・下五の表現と意味の上で繋がりをもたぬようなります。それで、説明句から情景の句になります。

  

  竹籠に森の匂ひのぶなしめじ

 

の句にも同じことが言えるでしょう。いずれもベテランの句ですから一時の、チョンボ?

 

今月は、残暑きびしく、そのせいでしょうか、天気予報の句が出句さていました。

  

  強情な残暑に敗けてしまひけり

  

  予報士の顔に安堵や秋めきぬ

  

  鬼の子や明日は西から雨予報

 

「鬼の子」は、ミノムシの異称です。この中から「強情な」の句を採りました。あとの二句は、採れません。「顔に安堵」と「西から雨予報」に問題がありそうです。

 

 

 

 

海の香かおる浦安吟行 2012・9・1

   吟行句抄

猫実という地のありていわし雲    シケ
秋の日の川辺の旧家訪ねけり
浦安の博物館の小ひょうたん
秋の昼寡黙なりけり舟大工
もくもくと貝串さして秋の暮

        

富士塚の苔を濡らして秋の雨     オミ
寄付の札整う神社秋祭
残暑なお肝吸つけて鰻飯
秋の声拳玉遊び独楽回し
秋高し今日の日を今二幕目

         

一雨に残暑一時忘れけり       アノ
鰯雲昔ベカ舟行きし川
富士塚を囲む蟬穴蟬時雨
全員が特上うなぎ秋の昼
川挟み猫実堀江鰯雲

         

鰯雲潮の匂へる川の町        アヒ
秋暑しペットボトルの濁川
べか船に体験試乗秋の風
肝吸に舌を灼きたる残暑かな
浦安の気紛れ天気九月なる
        

ガラス戸を締めて厄日の焼蛤屋    ヤミ
秋風を入れて旧家の揚戸かな
ベカ舟の川を秋風通ひをり
上げ潮や水門近く鰡飛びぬ
秋あつし遠く焼き玉エンジン音

        
色のなき風や猫実堀江町       トンボ
浦安の今昔譚やいま残暑
漁絶へし町にべか舟水の秋
浦安にうなぎ食べをる厄日かな
浦安は銭湯多き町なりき

 

※猫実は、地名で「ねこざね」

郷土博物館に再現された浦安
郷土博物館に再現された浦安
灸花(へくそかずら)
灸花(へくそかずら)