当日作品抄(入選作)
木犀のすでにこぼるる尼の寺 シケ
好み降る伊太利みやげのイヤリング ミノ
一望の利根川筑波蕎麦の花 オミ
宮島に妻恋ふ鹿の声ぞ聞く ミノ
空の字の多き経文秋深し ワユ
赤い羽根付けて客観る占い師 イレ
コスモスや園児八人保母二人 イレ
リハビリの夫を見守る秋の朝 イフ
山門へ行く手さえぎる萩の花 シケ
草紅葉淋しき色を尽くしけり アヒ
記憶より小さき校舎里の秋 チト
拝観の仏頭展や秋惜しむ チシ
秋高し黒髪余る乗馬帽 イカ
青蜜柑ありて人なき直売所 シケ
舟で着く水郷佐原在祭 アヒ
日本の天地八方秋惜しむ シケ
秋惜しむ千住大橋富士の山 コフ
原句
木犀のすでにこぼれぬ尼の寺
添削
木犀のすでにこぼるる尼の寺
キャンパスの並木の紅葉はじまりぬ イカ
木の実降る矢印の先天道儀
ビジターズワッペン木の実踏み当てし
秋の雨倚座の釈迦牟尼硝子越
青瓢見ゆるざるそば啜りけり
秋霖や波郷の墓も句碑も濡れ チシ
参道の落葉したしき深大寺
水澄める不動明王拝しけり
爽やかな香りの中の天文台
団栗を拾うて辿る展示館
秋霖に濡れてドームの歴史館 シケ
十月や師弟句碑訪う深大寺
行く秋の開山堂へ逆擬宝珠
虚子像に向かいて熟るる臭木の実
雨垂るる波郷の墓の秋気かな
秋雨の纏いつきくる天文台 オミ
色づきの少し間のあり水引草
望遠鏡茸も大き天文台
秋雨や裏道巡る深大寺
師弟句碑三歩下がりて秋深し
霧雨や天文台の大鉄扉 アヒ
秋深し赤道儀室の床軋む
水引草赤道儀室出でし辺に
踏むまじや稚き木の実翡翠色
句碑歌碑の雨に濡れゐる愁思かな
黄落の道縦横や観測舎 アノ
やや寒のドームに巨大望遠鏡
秋の雨人のまばらの天文台
愁思あり天文台の望遠鏡
句碑どれも読めぬ字のあり臭木の実
小糠雨金木犀の香やわらかに イア
団栗や武蔵野の森雨烟る
深大寺臭木の花も句碑もあり
竹の春遠き日偲ぶ天文台
秋の雨蕎麦を啜りて温まる
門柱に国立とあり葛の雨 ヤミ
木犀は香に私は昇る天文台
団栗を踏む音のして雨上る
きはちすや惑星といふ星に生き
肩越しにドームの姿冷まじく
秋の雨国立三鷹天文台 トンボ
秋霖に没せり三鷹天文台
床軋む音を立てゐて秋惜しむ
秋風の吹きて来てゐる深大寺
秋雨や倚座像釈迦牟尼出張中