◎2013・10 定例句会  10・27

当日作品抄(入選作)

 

木犀のすでにこぼるる尼の寺    シケ

好み降る伊太利みやげのイヤリング ミノ

一望の利根川筑波蕎麦の花     オミ

宮島に妻恋ふ鹿の声ぞ聞く     ミノ

空の字の多き経文秋深し      ワユ

赤い羽根付けて客観る占い師    イレ

コスモスや園児八人保母二人    イレ

リハビリの夫を見守る秋の朝    イフ

山門へ行く手さえぎる萩の花    シケ

草紅葉淋しき色を尽くしけり    アヒ

記憶より小さき校舎里の秋     チト

拝観の仏頭展や秋惜しむ      チシ

秋高し黒髪余る乗馬帽       イカ

青蜜柑ありて人なき直売所     シケ

舟で着く水郷佐原在祭       アヒ

日本の天地八方秋惜しむ      シケ

秋惜しむ千住大橋富士の山     コフ

 

原句

木犀のすでにこぼれぬ尼の寺

 

添削

木犀のすでにこぼるる尼の寺

 

◎国立三鷹天文台・深大寺吟行           10月5日

キャンパスの並木の紅葉はじまりぬ  イカ
木の実降る矢印の先天道儀
ビジターズワッペン木の実踏み当てし
秋の雨倚座の釈迦牟尼硝子越
青瓢見ゆるざるそば啜りけり
        
秋霖や波郷の墓も句碑も濡れ     チシ
参道の落葉したしき深大寺
水澄める不動明王拝しけり
爽やかな香りの中の天文台
団栗を拾うて辿る展示館

        
秋霖に濡れてドームの歴史館     シケ
十月や師弟句碑訪う深大寺
行く秋の開山堂へ逆擬宝珠
虚子像に向かいて熟るる臭木の実
雨垂るる波郷の墓の秋気かな
        
          
秋雨の纏いつきくる天文台     オミ
色づきの少し間のあり水引草
望遠鏡茸も大き天文台
秋雨や裏道巡る深大寺
師弟句碑三歩下がりて秋深し

        
霧雨や天文台の大鉄扉       アヒ
秋深し赤道儀室の床軋む
水引草赤道儀室出でし辺に
踏むまじや稚き木の実翡翠色
句碑歌碑の雨に濡れゐる愁思かな
        
       
黄落の道縦横や観測舎       アノ
やや寒のドームに巨大望遠鏡
秋の雨人のまばらの天文台
愁思あり天文台の望遠鏡
句碑どれも読めぬ字のあり臭木の実

            
小糠雨金木犀の香やわらかに    イア
団栗や武蔵野の森雨烟る
深大寺臭木の花も句碑もあり
竹の春遠き日偲ぶ天文台
秋の雨蕎麦を啜りて温まる
       
門柱に国立とあり葛の雨     ヤミ
木犀は香に私は昇る天文台
団栗を踏む音のして雨上る
きはちすや惑星といふ星に生き
肩越しにドームの姿冷まじく

       
秋の雨国立三鷹天文台      トンボ
秋霖に没せり三鷹天文台
床軋む音を立てゐて秋惜しむ
秋風の吹きて来てゐる深大寺
秋雨や倚座像釈迦牟尼出張中