◎11月定例句会   2013・11・24

当日作品抄(入選句)

 

交代に水琴聴きて秋惜しむ     チシ

すき焼きや一家九名揃ひけり    ヤミ

起きぬけに初霜のこと聞きにけり  ミノ

分校に犬小屋ありし山眠る     アヒ

時計なく母の一日石蕗日和     イレ

大川の左岸親しも翁の忌      イカ

振り向けば冬の満月能楽堂     シケ

立冬や昨日と違ふ日の光      ミノ

延々と甲州古道柿簾        イア

温め酒御馳走さまと申したり    ハセ

お霜月集える庫裏の黒光り     イケ

しぐるるや鹿島の杜の要石     アヒ

綿虫に遭ひたる御所の日暮れけり  イカ

咳ける病院地下の理髪店      シケ

神旅へうすずみいろに筑波山    イカ

しぐるるや鞍馬の山の九十九折   アノ

陰陽師祀れる社返り花       イカ

うかつにも咲きて深紅の返り花   オミ

奥宮へ貴船街道片時雨       アヒ

 

添削例(●…原句。○添削後)

 

●分校の庭の犬小屋山眠る

○分校に犬小屋ありし山眠る

 

●時計なき母の一日石蕗日和

○時計なく母の一日石蕗日和

 

●振り向けば冬満月の能楽堂

○振り向けば冬の満月能楽堂

 

●人気無き甲州古道柿簾

○延々と甲州古道柿簾

 

●お霜月古刹の庫裏の黒光り

○御霜月集える庫裏の黒光り

 

●綿虫に遇ひたる御所の日暮かな

○綿虫に遇ひたる御所の日暮れけり

 

●咳けば病院地下の理髪店

○咳ける病院地下の理髪店

 

●神の旅うすずみいろに筑波山

○神旅へうすずみいろに筑波山

 

●うかつにも咲いて深紅の返り花

○うかつにも咲きて深紅の返り花

 

以上

◎田谷の洞窟と建長寺宝物風入吟行      2013・11・2

 

朝戸出の目指す鎌倉神立つ日       イカ
初鴨や家ごとに橋かかりゐて
行く秋の洞のほとけに詣でけり
時雨傘提げて好日句碑の前
夕しぐれ五山の一の勅使門

         
秋惜しむ田谷の洞窟弥勒仏        チシ
欄干のなき橋渡り秋惜しむ
柚子の実や田谷の洞窟定泉寺
向き合うて座る車輌や秋の暮
秋深む小流れに住む命あり

          
行く秋の宿木纏い落葉樹         オミ
秋深し寶物の山建長寺
勅使門輝く秋の建長寺
小流れに三羽の鴨や草紅葉
鎌倉や釣瓶落の帰路につく

         
菊香る田谷の洞窟梵字堂         イア
瑜伽洞を出でし身なりし黄千両
洞窟の鑿跡観音蓮の飯
建長寺秋色輝く勅使門
建長寺宝物風入僧数多

        
身に入むや一打一打の鑿の跡       アヒ
洞窟を出づれば明し柿の天
地を覆ふ蔓わし掴み葛を刈る
解脱門前の柏槙秋時雨
寶物の多多風入の秋の寺

        
彫られたる十八羅漢露湿り        アノ
洞内に水澄む川のありにけり
洞内の壁に露けき菩薩たち
風入れの張り番の僧秋の寺
秋時雨天下禅林建長寺

        
せり上る百衣観音色葉散る        ヤミ
新蕎麦や九つ井の陶畳
金つぎの青磁大壺秋深む
風入れや香の匂ひの僧侶達
鎌倉へバスの客たり秋時雨

        
瑜伽洞を出てこの世の秋しぐれ      トンボ
燈明を提げて瑜伽洞冬近し ※瑜伽洞…ゆがどう(ヨガどう)

冷まじき洞の鑿跡洞の川  ※鑿跡…さくせき
小流れの一所一瞬光る秋

濡れ行ける鎌倉五山秋しぐれ