◎2013・3・24 3月定例句会

 当日作品抄

 

城垣に遊び石ありつくしんぼ     ワユ

くふくふと笑う子二人揚雲雀     シケ

なんとなく淋しくなれり白白蓮     オミ

野遊びの子を呼ぶ声の響きおり     シケ

デコボコの背丈と返事卒業す     イア

靴の紐結び直すや鳥交る     オミ

伊那谷の桃源郷の中にいる     イケ

嵐寛の看板架かる梅の郷     アノ

生業に世襲ありけり松の芯     シケ

橋をゆく人も朧の隅田川     チシ

千本に咲くを待ち居る山朧     シケ

 

● 兼題は、「朧」でしたが、「朧月」 「朧夜」ですが、これらは、歳時記に、別題として、立てられていますから「朧」の題に含みません。

 

大川の橋に橋見る朧の夜

今は亡き友との語らい朧月

 

これらは、

 

大川の橋に橋見る朧かな

語らいし今は亡き友朧かな

 

とすると原句よりも佳くなるようです。

 

 

● 理解が届かぬ句がありました。

 

 ●山路入り留まる一歩ほくり有り

ほくり…春蘭のこと。投句者から教えて貰いました。

歳時記の春蘭の記述には、「ほくろ」という別名が記されています。「ほくり」も別名のもう一つ呼び名ということのようです。

 

 ●東海道日永の宿の草餅屋

日永の宿…東海道53次には、「日坂」の宿は記憶がありますが「日永」は一寸、思い当たらず投句者に確認をしてみました。

 

四日市にある宿(しゅく)とのこと。

 

調べてみると四日市宿と石薬師宿(鈴鹿市)の間にある「間宿(あいのしゅく)」でした。間宿は、途中の休憩所のことで、旅人を泊める旅籠は、認められていません。実際は、目が届かずお目こぼしの状態であった所。

53次の「次」は、宿駅のことで、そういう意味から日永の宿は、東海道(53次)にはないということになります。

 

日永の追分は、東海道から分かれてお伊勢参りの分岐点です。

 

 四日市日永追分草餅屋

 

杖突きの峠の谷の朧かな

 

杖突きの…峠を杖を使って登っているような表現です。難解というかよく分らない表現?

 

これが、

四日市宿と石薬師宿の間にある「杖突坂(つえつきさか)」のことのようです。

「東海道名所図会」に、街道筋三重郡杖衝村にあり。日本武尊東征御凱陣の時、御足に悩ありて、歩行成り難きによつて、佩き給へる御剣を解いて、杖につき給ふより此の名あり。又右の方の山上に尊の血塚といふあり。

※日本武尊は、やまとたけるのみこと

 

この句は、「突き」の送り仮名の「き」をつけないで書けばよい。

 

  杖突の峠の谷の朧かな

 

となり、一読、明解になります。場所がどこにあるかは分からないにしても。

 

送り仮名をつけるか付けないのか注意をしましょう。

 

送り仮名をつけると…これは、動詞。何かをしていることなど

送り仮名付けないと…これは名詞。地名や者の名前など

 

祭り… 動詞 自分が何かを祀っている動作をしている

 

祭 … 名詞  祭そのものを指す。例・祇園祭など

 

 

 

 

◎2013・3・2 向島百花園吟行

大窪詩佛画竹碑
大窪詩佛画竹碑

人待てり馬酔木の花のまだ稚な      イカ
喫泉を噴かせ過ぎたる梅見かな
時の鐘木五倍子の花の日かげりぬ
鳩啼いてスカイツリーの霞める日
三月の日のとどまれる柏の木

        

膝折りて水仙の香を貰ひけり       チシ 
春風や地蔵通りのレストラン
猫柳池に映れる百花園
春疾風信号待ちの六十秒
梅まつりまづ甘酒を賜りて

        

甘酒に温くまる両手梅日和        オミ
三椏のすこし控え目庭の端
今日の日の空の色あり犬ふぐり
水温む浮いてこいこい鯉金魚
蛍烏賊ランチメニューの一品に

        

乳母車降りて歩く児木の芽時       シケ 
見上げれば白梅空を従えり
白梅の中の紅梅艶めけり
飛ぶ鳥を連れて吹き抜く春一番
坂上に地蔵のありて春の雲

        

百花園みとせ振りなり梅香る       ハセ
三椏や甘酒ちそうになりにける
梅香る水琴窟の音ひびきけり
土橋あり足のとどまる猫やなぎ
春一番花粉一番となりにけり

        

只見入る庭師の手際木瓜の花       アノ
天空のスカイツリーと木五倍子かな
雪吊のまだ残されて春疾風
留め石の置かれ茶室や寒椿
春光や残る柚子の実池の上

       

芽立つまで散るをこらへる枯れ柏     アヒ
蒼天や銀の和毛の辛夷の芽
老梅や年を経るとは美しき
閉ざされし茶室の雨戸牡丹の芽
草餅や集ふ齢の相似たる

       

紅梅へ真直ぐな道たどりけり       ヤミ
種床へはや足跡を付けて鳩
福禄寿の堂閉じしまま梅真白
地に這へる雪割りいちげを見つけたる
春風や昔住ひし地蔵坂

       

福禄寿堂のありけり馬酔木咲く      トンボ
こころいま奈良に遊べりあせび咲く
墨堤に地蔵堂あり梅白し
紅梅やむかし玉の井この辺り
梅が香の句帳を開く時立てる