当月雑詠抄
この駅もだれかの故郷いわし雲 チト
大鋸に挽かるる檜涼新た イカ
炎天の時止まりし終戦日 ナミ
わが影のかぶさる墓を洗ひをり イカ
蟬しぐれ黄泉平坂風の中 ナミ
走り蕎麦門前町の緋毛氈 シケ
行くほどに地平遠のく花野かな アヒ
文月や経のしまひのなむあみだ イカ
紅色の塗り箸下す新豆腐 イマ
宿坊に竹林の風新豆腐 アヒ
新豆腐日暮て夫と南禅寺 シケ
バースディケーキと並ぶ新豆腐 ハセ
新豆腐頑固親爺も八十に イカ
●原 句
紅色の塗り箸下し新豆腐 「下し」を「下す」に
バースディケーキと並べ新豆腐 「並べ」を「並ぶ」に
季語と叙述、意味づけをしてつながないこと。これが俳句の一つの形。二句一章。読者が切断され部分を補う。それが豊かであればるほど、楽しい句となる。
●兼題は、「新豆腐」でした。
めいめいに好む薬味に新豆腐
水槽に角を正して新豆腐
手で掬ふ水に浮遊の新豆腐
新豆腐食みし嵯峨野の豆腐處
新豆腐鍋に優しく持ち帰る
新豆腐と云う季語を入れて一句になっていますが、「新豆腐」の句として、これでいいでしょうか。現在、普通に市販されている豆腐から新なのか旧なのか分かりませんから止むをえませんが、「季語を季語として遣う」ことを心掛けてください。
それってどういうこと?
その秋に収穫された新大でつくられたものが」「新豆腐」です。
夏休みです