◎10月定例句会    2014・10・26

入選句


全集の口絵灯火に親しめり     アヒ

穂すすきの群れて峠のとの曇    シケ

天高し1ケ百円卵あり       ハセ

その先のことには触れず秋刀魚焼く ワユ

秋うらら帽子忘れて戻りけり    チシ

密厳堂裏の祠の残る虫       シケ

夕さりぬ甲斐の山脈霧籠めに    アヒ

良く笑ふ老人夫婦小鳥来る     ワユ

七十路を超えて覚醒小鳥来る     ナミ

歳月はゆるき坂道小鳥来る      コフ


添削句(入選句)

原 句 密厳堂裏の祠や残る虫

添削句 密厳堂裏の祠の残る虫


原 句 夕されば甲斐の山脈霧籠めに

添削句 夕さりぬ甲斐の山脈霧籠めに


原 句 七十路を越えて覚醒小鳥来る

添削句 七十路を超えて覚醒小鳥来る



添削句の一例

原 句 ランタンの燈でスコッチを夜長かな

添削句 ランタンの燈スコッチの夜長かな


原 句 さざんかの初めて通る裏通り

添削句 さざんかや初めて通る裏通り


原 句 ふるさとや脱穀機踏む課外塾

添削句 ふるさとに脱穀機踏む課外塾


原 句 生前の法名授くる菊の朝

添削句 菊の朝生前法名授かりし


原 句 向こう岸野菊の墓や渡し舟

添削句 向う岸野菊の墓へ渡し舟


選句の心得


選句の心得


 句会(古くは運座と云いました)での選句は、真剣勝負です。廻って来る清記用紙と真剣に向き合うことが大事です。

 

十句選であれば、一気に十句を選ぶことを心がけましょう。気になる句がある時は、予選として書きおき、そこから最終的に、十句を選ぶ。

 

決して、廻ってきた清記用紙を全部書き写すような「ゆる、ゆる」な事はやめましょう。選句とは、これ位の緊張感をもって一気に決しましょう。

 

披講されたときに、採りそこねた句が読み上げられた時、「しまった」という後悔があれば、そこが一番大事な、その日の収穫。それが句会という醍醐味であり、勉強です。全部書きうつして、その中から選ぶなど、時間もかかり、徒労とも云えることはやめましょう。

 

やはりそれでも心配だという人は、清記用紙のページと、上の句のみメモしておき、読み上げられた時に、追記するなど工夫をしてみることも。その句は、一回目を通して読んでいるわけですから書き取ることは可能でしょう。高々百句。真剣に読んでいれば、耳で聞いて筆記することなど可能ですね。

後悔を明日の力に!



◎日本橋クルージング吟行      2014・10・4

          

橋桁の獅子のレリーフ秋日差        イケ

解䌫の一礼したる水の秋

秋冷の川より望む明治丸

馬手倉庫弓手ビル群いわし雲

クルーズの隅田川を返す秋の昼


          

川風にトランペットや秋の昼        オミ

長月や道路元標道の央

秋風の湾岸夜景万華鏡

秋一日船に遊びて果てにけり

運河秋お台場築地佃島


          

秋風や船より仰ぐ日本橋           アヒ

クルーズや風の親しき秋日和

秋晴れの日の風の色空の色

支流から本流に入る秋の声

秋雲や埠頭に白きクルーズ船


          

落葉掃くボランティアなり日本橋       アノ

舟で行く亀島川の花芒

川沿いの聖ルカ教会柿赤し

乗りてすぐ江戸橋くぐる秋深む

行き交わす船に手を振る秋の風


          

初紅葉路上ライブの日本橋          チシ

霊岸橋くぐり両岸芒の穂

秋澄むや隅田川に向う遊覧船

五街道起点の橋の秋日和

橋くぐり海まで続く秋の水


          

秋麗ら日本橋から舟めぐり          イフ

澄む空へ飛翔するかに麒麟像

ほろ酔いて本町通り秋の昼

秋澄める川面に響くトランペット

秋深しこの街好きと聞こえくる


          

秋風や日本橋をくぐりたる          ヤミ

鎧橋江戸橋あたり柳散る

海鳥の声秋の波引く佃島

秋潮や住吉様の青鳥居

十月や昼のランチのイタリアン


          

冷まじや居酒屋無法松なりき        トンボ

舟へ手を振れる子と親天高し

冷まじや月島聖ルカ教会も

海へ航く舳先へ秋の日の降れる

秋光を割り裂きながら舟の行く