◎11月定例句会   2014・11・23 

入選句

北風や投薬増える処方箋        シケ

紫に煙る筑波の眠りけり        ヤミ

経師屋に用を頼める冬はじめ      チシ

短日やローカル線の時刻板       イマ

綾取や一人遊びの小六月        シケ

泥葱を下げて一人に慣れてくる     ワユ

ゆらゆらと粘膜に入る寒さかな     ナミ

短日やとなりの家に往診車       イカ

医者の言ふ少々の酒冬隣        イカ

一目ごと孫に近づく毛糸編む      イマ

冬晴れの北信五山一望す        イケ

冬はじめ江戸川堤富士見ゆる      イフ

 

添削して入選とした句

●原 句 経師屋に用を頼みに冬はじめ

●原 句 短日やローカル線の時刻表

●原 句 綾取のひとり遊びの小六月

●原 句 泥葱を下げて一人にすこし慣れ

●原 句 一目ごと孫に近づき毛糸編む

●原 句 富士見える江戸川堤冬はじめ

 

米 補足

●北風の句、経師屋の句 つきすぎの感あり

●「や」と「の」の句、句の雰囲気が変わる事を味わってください

●冬晴れの句、北信五山一望すは、常套句

●原句で、富士見えるの句、このままではいつでも見えている感じとも受け止められる。季節が変わって見

えるようになったのでしょうからそれを表現しましょう



米 泥葱の句、川柳の発想です。

・川柳は、本来、前句(まえがき)がつきます。

例を川柳集『柳樽』から

 

馬鹿なことかな馬鹿なことかな

  ひんぬいた大根で道をおしへられ


俳諧『七番日記』(一茶句集)一茶の俳句の例

  大根引大根で道を教へけり


俳句と川柳の違い、ここにあります。泥葱の句も

 

馬鹿なことかな馬鹿なことかな

  泥葱を下げて一人にすこし慣れ

と、この前句の川柳として成立します。


俳句ならば

  泥葱を下げて一人に慣れてくる

と境遇の変化を述懐する心の句として鑑賞できます。


添削例

●原 句 幼子の両手に余る木の実落つ

 添削句 幼子の両手に余る木の実かな


●原 句 行く秋の旅の終りの魚市場

 添削句 行く秋や旅の終りの魚市場


●原 句 凸凹道今生きている冬帽子

 添削句 凸凹道今を生きいる冬帽子


●原 句 店先のイルミネーション冬はじめ

 添削句 店先にイルミネーション冬はじめ


●原 句 植木鉢家に取り込む冬はじめ

 添削句 冬はじめ家に取り込む植木鉢





◎湯島聖堂・ワテラス秋葉原吟行 2014・11・3

当日作品抄

          

大椋の注連乾び秋深みけり         イカ

茶の花の仰高門へ続きをり

黄落のはじまってゐる孔子廟

地下鉄が地上へ秋の麒麟草

文化の日いまをむかしにカツサンド


          

天高し緑青映える大成殿          オミ

鬼龍子の四方睨める秋深し

行く秋や昔交通博物館

文化の日孔子像の前に居り

若者の闊歩する街文化の日


          

楷樹とは楷書の木と知る文化の日      イア

秋色の溢れる店舗赤レンガ

店先に咲くほととぎす昌平坂

茶の花の続く道なり孔子廟

鳩並ぶ聖堂の屋根秋日差


          

落葉踏み孔子の像を拝しけり        チシ

山茶花のこぼれてをりし孔子廟

一口稲荷に貰ふ風邪封じ

幼子も交じりて落葉掃きをれり

秋惜しむ聖橋経て昌平橋


          

散紅葉ゆるき流れの神田川         アノ

家族して落葉掃きいるボランティア

晩秋の人気稀なる淡路坂

文化の日漢字検定旗の立つ

電気街抜ければ秋の深まりぬ


          

大成殿煙りて遠き秋の空          イフ

練塀にかかる楷の樹秋深し

行く秋や昌平坂に佇みて

かたむくは宥座の器これ秋思

身に入むや昔をいまに神田川


          

文化の日孔子の廟に詣でけり        イケ

行く秋の神田界隈歩き居る

神田川深く澱める冬近し

とりどりの箒の先の落葉かな

そぞろ寒神田は坂の多き町


          

雲飛んで十一月の聖橋           ヤミ

天高し屋根の火伏の鬼犾頭

色鳥や孔子の像のかたはらに

孔子廟階段下に赤のまま

はるかより珈琲香気秋深む


          

差し掛かる聖橋なり秋の行く       トンボ

孔子像見上げて秋を惜しみけり

楷の木を見あげる人ら秋深む

冬近し雲の動かぬ孔子廟

深秋やつまづき易き石畳


かなり苦戦しました。