◎今月の定例句会 3月 2014・3・23

今月の入選句

朧夜のラウンジ四十五階かな        イカ

訪ねゆく道に迷える沈丁花         シケ

アネモネの赤の誘う珈琲屋         イマ

子には子の新たな家路春の月        チト

山門は風の出口や梅匂ふ          イレ

夕暮れの寒さ残れる彼岸かな        ナミ

山脈の青き日暮れや花辛夷         ナミ

水滴をまとひて昇る春の月         チシ

芽柳の先から季節生まれおり        イマ

芽柳や外湯を巡る下駄の音         アノ

 

今月は、いつにもまして低調でした。

 

●添削実例

 

原句  訪ねゆく道に迷いて沈丁花    

 ※「て」でつなぐと散文。

添削  訪ねゆく道に迷える沈丁花   

 

原句  白檀香選びて彼岸の入り日かな 

 ※正しくは「彼岸の入り」です。

添削  白檀香選び迎える彼岸かな

 

原句  乗り合いの稚児(ややこ)笑いてしゃぼん玉  

 ※これも、「て」。

添削  乗り合いの嬰児(えいじ)の笑うしゃぼん玉

 

原句  芽柳の故郷(ふるさと)後に五十年    

添削  芽柳や故郷を後に五十年     

 ※眼前にある「芽柳」を詠む。

 

原句  白がちの紫羅蘭花(アラセイトウ)を供華とせり

添削  今日供華に白きストック選びけり 

 ※アラセイトウは、ストックのこと。気取らずに。

 

原句  渡舟(わたし)から先立つ小犬柳の芽

添削  渡舟から小犬飛び出す柳の芽  

 ※説明から景が見えるように変身。

 

原句  芽柳や対岸からのマイク声

添削  芽柳やマイクの声の向う岸  

 ※説明から脱出。対岸との距離感も。 

 

原句  いま沈む春の夕日を見てをりぬ

添削  いま沈む夕日見てゐる紫木蓮  

 ※只事から、紫木蓮の景へ変身。

 

原句  アネモネの赤に誘われ珈琲屋

添削  アネモネの赤の誘う珈琲屋   

 ※只事から、魅力的なアネモネへ。

  

 

◎世田谷梅まつり・羽根木公園                   2014・3・1

当日作品抄

 

        

急行の停まらぬ駅の梅咲けり       イカ

梅咲けり紅鹿児島も白加賀も

盆梅の白しだれをり雨来るか

茶の作法とんと知らずよ梅まつり

梅の昼演歌流れて人混んで

 

         

公園の梅の香にする深呼吸        イア

梅の丘ゆけば舞台と屋台あり

迷いつつ苗木を土産梅まつり

梅まつり秀句の並ぶ掲示板

梅まつり駅舎の中の投句箱

 

         

築山へもうあと一歩梅おぼろ       チシ

演芸を見てゐる人も梅まつり

観梅や駅に戻りて投句箱

春朧小田急線の梅ヶ丘

梅林の順序に沿いて歩きけり

        

        

人の世の哀歓のあり枝垂梅        イフ

千年の昔の故事も鶯宿梅

植木売る弾む声して梅盛ん

名のみ知る花を教わる梅の里

晴れも良し煙雨も良かれ梅の花

 

        

梅の門梅の階梅の丘           アヒ

階に展け梅また梅の山

梅の径止まりてはまた進みては

露店へと足の向きたる梅の昼

春時雨梅ヶ丘駅投句箱

 

        

世田谷の小高き丘の梅まつり       アノ

梅の路足裏に土の優しかり

苗木屋の梅桃金柑竹箒

飛石に莚敷かるる春の雨

春寒し湯茶接待の紙コップ

 

        

降り立てば梅ヶ丘駅春時雨        ヤミ

高低の丘を踏みゆく梅真白

焼菓子の香りや薄紅色の梅

冴え返る竹の籬の汀女句碑

振り向けばもつとも香る野梅かな

 

        

来てあれば野梅のかをり坂がかり   トンボ

梅園の呉服しだれに雨の降る

ハメハメハ大王の舞梅まつり

赤黄色むらさきマスク苗木売カ

キフライかつをのたたき春の雨

 
呉服(くれは)しだれ
呉服(くれは)しだれ