◎今月の定例句会 2014・7月27日

当日入選句

 

片陰り日本橋にて落合ぬ         イケ

うたた寝の母のかたえの水中花      シケ

はまなすの日本海なり良寛像       イフ

教室の魚あずかる夏休み         オミ

ありがとうとメール一行梅雨明ける    イフ

風鈴や一日人と話しせず         ワユ

水打って歩道の人の和みけり       アノ

跡取りの経の声好し施餓鬼寺       アノ

母の忌のひとりの逮夜青葉木菟      イカ

向日葵の迷路に母を探す声        アノ

向日葵や午後休診の札下がる       イカ

向日葵や小さき机の分教場        イア

向日葵の明るさ時に虚無の影       イフ

 

 

●添削し、入選句とした句

 

原 句 うたた寝の母のかたえの日日草

添削句 うたた寝の母のかたえの水中花

 

原 句 向日葵や迷路に母を探す声

添削句 向日葵の迷路に母を探す声

 

原 句 「ありがとう」一行メール梅雨明ける

添削句 ありがとうとメール一行梅雨明ける

 

原 句 向日葵や明るさ時に虚無の影

添削句 向日葵の明るさ時に虚無の影

 

原 句 夏日陰日本橋にて落ち合いぬ

添削句 片陰り日本橋にて落ち合いぬ

 

原 句 はまなすや良寛像と日本海

添削句 はまなすの日本海なり良寛像

 

●選外句を添削

 

原 句 亡き夫の九年たちたる梅酒かな

添削句 亡き夫とともに九年の梅酒かな

 

原 句 向日葵や吾れに戦中戦後あり

添削句 向日葵や我に戦後の六〇年

 

原 句 大勝負一瞬止まる夏扇

添削句 夏扇一瞬止まる大勝負

 

原 句 花火果ていとこ同志の別れ道

添削句 花火果ていとこ同士の別れ道

 

原 句 梅雨荒れや波耐え忍ぶマリア像

添削句 梅雨荒れの波耐え忍ぶマリア像

 

原 句 ほうたるの少しだけ寄る道の駅

添削句 ほうたるや少しだけ寄る道の駅

 

原 句 生き様を誉めて回忌や夏日陰

添削句 生き様を誉めて回忌や水羊羹

 

※以上には、季語を置き替え主題を明確にしたもの。「や」を「の」に変え、またその逆のものを正して主題を明確にしたもの。不適切と思われる用字をかえたもの、語順を入れかえ臨場感をもりこんだもの。特に、初めの二句は、制作意図を類推しての添削です。何れの添削も、原句をできるだけそのまま生かしたままですから別の解もあることでしょう。

 

●理解に苦しむ句を取り上げます

 

その1

 

・夏帽子人の名前をまた忘れ

・街に出て若さを貰ふ夏帽子-[季] 夏。

 

この一句目…この夏帽子、また忘れたという人と、どう関わっているのでしょうか?情景が読み取れません。

 

この二句目…夏帽子が若さをもらったのですか?ところで若さは貰うものでしょうか?

 

 

その2

 

・紙魚一つ青春の門駆け抜ける

 

青春の門は、書名?、そうすると「」をつけて「青春の門」とすべきという説がありました。たしかに、五木寛之が1969年から『週刊現代』に断続的に連載している大河小説がそれです。のちに単行本にもなり沢山売れた本です。

 

紙魚は、夏の季語で「和紙衣料穀類などを食害する。しみむし。 」です。同書は洋紙を使った本ですから紙魚はつきません。在り得ない句です。

 

 

その3

 

岩清水母の手盆のニッキ水

 

「手盆」は、「てぼん」と読み、「手を盆代りにすること」。使用例として、箸からこぼれそうになる時、もう一方の手を添え受けるることなど手盆と言うようですが、和食の時は、懐紙をつかうのが本来なので手盆は、「はしたない」といわれています。

また、お茶などを供する時に、淹れたお茶をお盆に載せて相手に供しますがお盆を使わずそのまま供することなども手盆と言うようです。これもはしたない行いです。

 

この句、先に記した「手盆」の意から「母の手盆のニッキ水」とありますから母親がこぼさぬようにニッキ水を供しているところでしょうか。そうすると何故、「岩清水」が出てくるの。

「岩清水」とありますから、もしかして岩清水を両手で掬っていることを「手盆」と言ったのでしょうか。そうすると何故、「ニッキ水」。両手でニッキ水は掬うなんて、どうやってするのでしょう。

はっきりとした自信にあふれた句のようですが、句意が読みとれません。

 

 

◎日本の三奇矯の一             甲斐の猿橋吟行   7月5日

作品抄

 

猿橋の駅を縦横夏つばめ          イカ

青梅雨の猿橋縁起拾ひ読む

猿橋の丹塗りの祠梅雨深き

猿橋の淵覗き込む梅雨の隙

橋の茶屋むかし旅籠屋額の花

          

青雫猿橋ゆきつもどりつつ         チシ

ハイキングコースに出会ふ濃紫陽花

梅雨晴間電車待つ間のお八つかな

家苞に買ふ大蒜を選りにけり

雨上る特急甲斐路通過せり

          

立ちのぼる夏霧四方の甲斐の山       シケ

仰ぎいる甲斐の猿橋青しぐれ

雨の道毛虫なめくじ道祖神

七月の心満ち来る瀬音かな

一行に遅れて涼し旧街道

          

川音の甲斐の猿橋梅雨の中         オミ

滴りの数の威勢や桂川

身心の青葉の色に浸り居る

渓谷の深さ覗くや青楓

空合いの現れ出でし夏の山

          

猿橋の駅舎の軒や巣立ち鳥         ハセ

猿橋の話しを佛に語りけり

猿橋の遊歩道沿い額の花

八ツ沢の水路猿橋夏もみじ

猿橋の甲州街道夏つばめ

          

万緑の甲斐の猿橋小さくて         ミノ

夏霧の山肌沿いに登りゆく

満開の紫陽花の群色の濃し

かたつむりとつてくれろとすねてをり

滴りぬ崖の地層を剝き出しに

          

萬緑や旧トンネルの出入口         アヒ

冷酒も地のもの馬肉鮎うるか

青梅雨や宿場旅籠の出桁軒

一枚の窪地に青田五、六枚

夏霧や甲斐の山並高からず

          

沢音を殻にこもりて蝸牛          アノ

雨上がる猿橋駅の夏燕

街道の酒屋燕の巣の四個

渓谷の空に一閃岩燕

山深き甲州街道道茂る

          

雨の中甲斐の猿橋四葩咲く         イフ

緑さす雨の猿橋沢の音

梅雨最中酒の猿橋忠治そば

富士見えぬ岩殿山も夏の霧

雨止んで親を急かせる燕の子

           

かたつぶり甲斐猿橋に雨止みぬ       ヤミ

猿橋の雫ぽたぽた青葉かな

夏蝶の渡る猿橋見上げをり

猿橋をまた返しけり鴨足草

鈍行を待つ間まんぢゅう夏燕

           

万緑や雲立ち騒ぐ山の際         トンボ

猿橋の負へる歳月蝸牛

滴りや鏑懸魚もつ山王社

猿橋も岩も滴りをれるなり

茂る中濡れるレンガの廃隧道