2015・04 定例句会  4月26日

<今月の入選句>

 

春惜しむたどりて着きし姥子駅     チシ

担ぎ来る身丈に余る若布刈鎌      イカ

坪庭の闇へ落花のいづくより      アヒ

花の雲廃校跡にケアハウス       シケ

春寒し看護日誌に付箋あり       ミノ

見つけては見失う児や汐干狩      シケ

バス停の次も橋の名糸柳        イカ

アネモネや朝のホテルの白卓布     アヒ

 ※若布刈鎌は、「めかりがま」と読めばよい

  でしょう。

 

・添削してある句の原句

原 句 春惜しむたどり着きたる姥子駅

原 句 担ぎ来し身丈に余る若布刈鎌

原 句 花の雲廃校跡のケアハウス

原 句 春寒し看護日誌にある付箋

 

 <添 削>

原 句 春闌くる本に付箋を付けしまま

添削句 春闌くる本に付箋のつきしまま

 

原 句 新人を加える会議四月かな

添削句 新人の加わる会議四月くる

 

原 句 紫木蓮母に諾うことのみや

添削句 紫木蓮母に諾うこと多し

 

原 句 忘備録書いて八十八夜かな

添削句 忘備録書きて八十八夜かな

 

原 句 見習れたる景色包みし春霞

添削句 見慣れたる景色を包む春霞

 

原 句 桜蕊髪ざしとなり春うらら

添削句 桜蕊髪に刺さりて仕舞いけり

 

原 句 嘶きて蹄の音や春の果て

添削句 嘶くも蹄の音も春の果て

 

原 句 歌謡ショー跳ねて朧の街灯り

添削句 歌謡ショー跳ねて朧の街へ出づ

 

原 句 豆飯のほっこり盛りて夕餉かな

添削句 豆飯のほっこり盛りて装いけり

 

原 句 摘みきたる山菜揚げて夕餉かな

添削句 摘みきたる山菜揚げて大家族

 

※●添削句の中に、「夕餉かな」と云う句がありましたが、当然、夕餉と想像される言葉が斡旋されているわけですから、夕餉は、不要。ここで大きく言葉を転換させること。違う景色が見えてくるはずです。

 

坪庭?

 

今月

坪庭の闇へ落花のいづくより

 

の句がありました。

 

坪庭とは?

 

遡れば、源氏物語にも。それはそれとして、この形は、京都の町家などにも展開、各地に現存。親しく目にすることができます。

造園用語として…現在、

 

建物と建物との間や、敷地の一部にあり、塀や垣根で囲まれた、あまり大きくない庭の事を指してます。

中庭的なもので、建物の内部に、光や風を採り入れるために作られ、元来、町屋造りにおける主屋と離れのとの間にある庭園を指したもの。


ただ単に、一坪ほどの、「小さい庭」の意ではありません。


前述したように地方へ行くと、旧家などでよく出遭うことがありますが、現在でも、このような庭をつくる人が多いようです。

少なくとも、坪庭と云う時には、こういう庭として鑑賞することがよいでしょう。

 


 

今月の吟行 桜の青山墓地 4月4日

          

霊園の辻の御衣黄桜かな          イカ

はなももの緋色白色異人墓地

ひとしきりクルスの墓にさくら散る

乃木さんの墓に寄らざり花ぐもり

ケーナ吹く男が二人花の昼

          

高層のビルを遠見に花の雲         アヒ

一団に一人遅れて野蒜抓む

奥つ城も十字の墓も花の中

花の昼枝移りする鳥の声

          

花吹雪青山墓地を覆いけり         オミ

囀りや外人墓地の人の声

花の昼パスタの店に決めにけり

花曇り急ぐ青山一丁目

          

花吹雪つけて持ち込む電車まで       イア

花曇墓碑銘読みつゆっくりと

墓地静か今を芽吹ける木のありて

花冷えの異人の墓地の石ひとつ

          

母国見て耶蘇の墓立つ花の雲        ハセ

年輪に苔むす衣老桜

淋しげな外人墓地に花の散る

若き木と散り際同じ老桜

          

紅白の花桃守る耶蘇の墓          ミノ

桜木の何を語らむちりぬるを

奥つ城に兵の眠らむ花まんだ

花屑を踏む仕儀となり石畳

          

亡き人の声と聞きとむ桜かな        チシ

ひともとの御衣黄桜見てをれり

リュック背に青山通り花の昼

花人となりて青山墓地の中

         

霊園の奥へ奥へと桜かな          イケ

花屑の土を被いて柔らかき

黄泉とこの世の間桜満つ

墓碑銘にふるるばかりの糸桜

          

桜散る外人墓地の石畳           アノ

御衣黄の墓地の十字路案内板

花馬酔木ビルに収まる石材店

墓地囲む高層ビルや花の昼

          

花冷の青山霊園訪ねけり          イフ

花の舞う無名戦士の供養塔

老木の瘤にはりつき桜咲く

花に酔い酒に酔うての帰る道

          

散る桜異国の人の眠る墓          シケ

花桃を供華としている耶蘇の墓

御衣黄やこれより外人墓地の道

花冷や小さき石置く墓のあり

          

飛石に模様めく花耶蘇の墓         ヤミ

のどけしや魚藍観音立ちたまひ

花疲れなど無き顔をして撮る写真

花人の屈み拝める無縁墓

          

ぺちやくちやと墓の声する花の昼     トンボ

外人も子爵の墓も花の昼

花冷や青山墓地の区劃番

花曇石材店に人も見ず

﨟長ける異人の墓碑や花の風