◎8月、定例句会、  2015.8.23

当日入選句

 

●人住まぬ家に月光惜しみなく     アヒ

●江ノ電の燈の遠ざかる夜の秋     アヒ

●返信をやうやく果たし法師蟬     イカ

●炎天や伝法院の鬼瓦         チシ

●山霧の父のふるさと明けて来し    シケ

●みづひきのひとすぢごとの夕日かな  イカ

●廃屋の水引草や紅きりり       ナミ

●水引やかつて文士の逗留地      アヒ

●土壁の残る山里水引草        アノ

●渓谷の気紛れ雨の水引草       オミ

●里帰りせし娘と散歩水引草      ハセ

●触れもせずつまくれないの弾けるは  コフ

●さまざまの坩堝と化して阿波踊り   コフ



添削して入選句の原句

●炎天下伝法院の鬼瓦

●渓谷の気紛れ雨に水引草

●触れもせでつまくれないの弾けおり

●さまざまに坩堝と化して阿波踊り


添削例

原 句 光陰の等しく流れ盂蘭盆会

添削句 光陰のさまざまなれど盂蘭盆会


原 句 秋立つや日がなめくりて時刻表

添削句 秋立つ日日がなめくれる時刻表


原 句 新涼や一級河川に屋形船

添削句  新涼や一級河川の屋形船


原 句 終戦や遠くて近き七十年

添削句 終戦の遠くて近し七十年


原 句 あるかなき水引草に風が立ち

添削句 あるかなき水引草に風の立つ


原 句 唐櫃のすき間一本鶏頭花

添削句 唐櫃の前に一本鶏頭花


※唐櫃とは、「かろうど」と言い、墓石の骨壷を納めるところです。

当然、水が入らないように密閉されていますからそこにはすき間はないでしょう。唐櫃と何かの間をすき間と言っているようですが、情景が見えてきません。

一例として、情景が見えるように添削しました。

 

8月の吟行は夏休みです

※佳句再録 26・9~ 27・8   

花木槿急行電車過ぎゆけり    アノ

秋蝶の随神門をくぐりけり    オミ

庭下駄の静に置かれ涼新た    ミノ

五街道起点の橋の秋日和     チシ

ほろ酔いて本町通り秋の昼    イフ

天高し緑青映える大成殿     オミ

茶の花の続く道なり孔子廟    イア

山茶花のこぼれてをりし孔子廟  チシ

電気街抜ければ秋の深まりぬ   アノ

練塀にかかる楷の樹秋の空    イフ

神田川深く澱める冬近し     イケ

天高し屋根の火伏の鬼犾頭    ヤミ

新海苔の海苔ひと色の海苔の店  アヒ

ぞろぞろと只ぞろぞろと師走くる アノ

そこどけと通る台車のくろ鮪   イケ

風を聴く勝鬨橋の十二月     ヤミ

同じ顔揃ひて寧し年新た     アノ

初手水相模之国一宮       オミ

注連飾る八岐大蛇退治の絵    ハセ

たはぶれて引く宝引の大当り   チシ

たこ焼きをみんな頬張る初詣   イア

手袋をとりてくぐりし大鳥居   シケ

内庭に巫女の行き交う初詣    ミノ

奥殿の山茶花垣を廻らせる    ヤミ

茶漬屋の雪見灯篭春浅し     アヒ

早春やフリー切符をポケットに     アヒ

早春の松へまぶしき光射す    ミノ

かたかごの花や財閥屋敷跡    アノ

カワニナも川の流れも春寒し   ミノ

片栗に咲けよとばかり鹿おどし  イフ

一団に一人遅れて野蒜抓む    イフ

奥つ城も十字の墓も花の中    イフ

亡き人の声と聞きとむ桜かな   チシ

若き木と散り際同じ老桜     ハセ

のどけしや魚藍観音立ちたまひ  ヤミ

タンポポの今飛びますと風を待つ ハセ

この地より奥の細道雲の峰    オミ

寺を出て祭はやしに出合いけり  ハセ

噺家も遊女も眠る青葉寺     アノ

行く春や子規球場に人の影    ヤミ

拝見の日本庭園雨蛙       ヤミ