◎2015・5月定例句会     2015・5・24

当日入選句


友の逝く色即是空花菖蒲       コフ

潮の香の改札口や夏つばめ      イカ

紅ほのか一輪挿の白牡丹       アノ

迎えるも見送るも駅柿若葉      イケ

緑さす松前藩墓所五十五基      イア

棟梁のおとがい青し宵祭       イカ

柿若葉寺門の内の保育園       アヒ

老犬の手足寝そべる柿若葉      ヤミ

開通す金精峠柿若葉         チシ

新茶汲む対の湯呑の片っ方      シケ


※添削して入選、原句

・友が行く色即是空しょうぶ咲く

・老犬の淡き眠りや柿若葉

・開通の金精峠柿若葉


※類句

紅ほのか一輪挿の白牡丹

は、

白牡丹といふといへども紅ほのか

と云う、高浜虚子の有名な句があり、歳時記にも採られている句があります。


この句を知らずに白牡丹に紅を見てとったことを評価して入選としました。


このように見えるものを見たという句は、始めに発見した者以外は、類句、あるいは剽窃という本人にとっては思いがけないことですが、罵声をか

けらることがあります。


見えるものだけを題材とすること、これがいかに無策であるかを心に留めておきましょう。


●俳句は、リズム良く

・リズム良く経と木魚と老鶯と

と云う句が出句されていました。リズムの良い句ですがこういう句が欲しいわけではありません。


読みあげて気持よくリズムが響く句として欲しいということです。

今月は特に、ごたごたとした句が目に付きました。一部を抜いてみましょう。


・子かまきり触るれば鎌を振りにけり

・日ごと伸びるビルうとましや胡瓜もむ

・煮詰りし実山椒の香空に消え

・薔薇の香を含みし雨の窓の地図

・夏来たる小鯛ささ漬樽木の香

・空木に雨垂れ拍子苔清水

・リュック背に富士行者となる裾野道


詠みたいことが明確であれば、もっと単純化リズムよくなり相手の心に響くことでしょう。

リズムが良いことで俳句の表現は完成します。


・緑さす松前藩墓所五十五基


と、漢字ばかりですが読みあげてみれば心地良いリズムが響きます。その一例として記しておきます。


●他人事ではなく自分の句を詠む事

・更衣母の箪笥を開けもして

※句の作りとしては、作者の更衣の句ですが、そうすると母の箪笥を開けもして、何をしようとしているのでしょう。母の更衣と云うように想像めぐらして解釈されている人がいますが、そうすると作者の母に対する感情などが目に見えてきません。どっちつかずの句と云うことになります。


・母にある好みの径や柿若葉

※作者自身でもなく、母でもなく、この句の主人公は、「径」、そういう詠み方になっています。


・異邦人乗せて走れり祭り中

※作者が異邦人を何かに乗せて走っているのでしょうか。


・一向に進まぬ終活春の果て

※この句の主人公はだれ?


●省略とは

・緑蔭や社に多き由緒書

※神社仏閣には、由緒書、つまり、縁起書が建っています。末社摂社を多く持つところでは当然これが多くなります。このような当たり前のことは省略。ですからこの句で残るのは、緑蔭と社ということになり、内容が整っていません。


・母の日に母の繰り言聞いてをり

※年老いた母は、繰り言をくり返すものです。若い母親でもこれは同じでしょう。先だって食事で入った店で隣の席の二人、既に始めていた繰り言、食事が終って店を出る時まで延々と聞かされました。

母の日にもと云うことなのでしょうがこの日たまに会

った母親であれば娘には、当然。よくあることですからこのような情景は当たり前です。題材としては、魅力がりません。省略しますと残るのは母の日だけとなります。


・つややかに輝き揺れる柿若葉

※柿若葉は、いうなればそういうものです。残るのは柿若葉だけ。


・四人乗園児のバギー柿若葉

※四人乗バギーといえば、幼稚園か保育園に決まっています。違うという人もいるかも知れませんが、この句では、「園児」は不要ですから省略。


・賜りし新茶八十八夜摘

※八十八夜と新茶は、云わば同義語。どちらかを省略。


と、このように…。


今回は、よろしくないことばかりを取り上げました。

発想を変え、題材を選び表現に工夫をし

推敲をして

自分気持が言外に滲み出るようになっているか、見直してみましょう。







◎上野の東照宮、牡丹と芍薬吟行  2014・5・2

作品抄


          

上野駅公園口の五月かな       イカ

新緑やひだり東照宮へみち

ジャグラーら五月連休はじまりし

あまねき日花つけて樫亭々と

修復の済みし唐門緑さす

          

連れ立ちて揃ひもそろう夏帽子    チシ

若葉風東照宮の他抜絵馬

風薫る摺鉢山てふ古墳かな

足裏にやさし石段著莪の花

初夏の恩賜公園案内板

          

外つ国の人も憩える春の行く     オミ

東照宮青葉の中に鎮座せり

狛犬の頭くすぐる若葉かな

灯籠の緑青深し夏隣

黄牡丹の際立つ庭でありにけり

         

タンポポの今飛びますと風を待つ   ハセ

行き先に留石のありボタン園

石楠花の瑞垣を背に咲きにけり

ボタン園琴の調べを聞きつ見る

狛犬やゴールデンウィーク人出かな

         

風薫る梵鐘聞こゆカフェテラス    イア

関守石ありて佇むぼたん園

レース地をまとめたような牡丹あり

若葉萌ゆ大名灯籠続きけり

初夏や上野公園大道芸

          

薫風や子規球場に献血車       アノ

子規球場ノックの音も夏近し

黄金週間臨時改札設けられ

緑蔭や大名寄進の銅燈籠

踏み入れば青葉若葉の上野山

          

若葉して老いも若きも上野山     アヒ

初夏の空や小高き古墳跡

園若葉小さきメリーゴーランド

鴉群れ五月の空を穢しけり

葉桜や宝珠欠けゐし石灯籠

          

献灯の葵の紋や花は葉に       シケ

拝殿へ敷石続く青葉闇

緑蔭や辻芸に人二重三重

降り立ちて上野の山へ入りにける

薫風や声沸き起こる子規球場

          

行く春や子規球場に人の影      ヤミ

古墳なる頂上に居り夏始

気がつけば園丁の来て白牡丹

傘影の風はかすかや華鬘草

初夏や眼下に池の広ごれり

          

新緑や上野の前方後円墳      トンボ

献血の声掛けられる薄暑かな

牡丹の花に漣広がれり

人を待つ東照宮牡丹園

遠方に噴水上る上野山