◎7月、定例句会   2015・7・26

当日入選句


天道虫故郷だより途絶えがち       チシ

夜濯や明日に残さぬ今日の事       アヒ

言うなれば独居老人昼寝覚        イカ

夏つばめ地面かすめて右左        ミノ

半纏に古き町の名子供山車        イカ

サイダーの泡の向うに昭和あり      アヒ

夏見舞紙縒の封の吉野葛         イカ

文来たる貴家七回忌大施食会(おせじきえ)アノ

棒杭の天辺にゐる赤とんぼ        ミノ

蓮の葉の揺れ出す風の生まれけり     チシ

雪渓を二手に分かれ這い上がる      ハイ

マイマイは角を伸ばしていばりけり    ハイ

夕立やこぶし一つを譲り合う       コフ

夏帽子いささか老いをかくしけり     イレ

掌に晴れたら飛べと天道虫        ハイ

天道虫天道虫と子らの声         ハセ

奪衣婆の後へ消えし天道虫        イカ




◎添削して入選とした句の原句


●夜濯や明日に残さぬ今日の悔い

●蓮の葉の揺れ出し風の生まれけり

●雪渓を二手に分かれれて這い上がる


◎入選に至らぬ句から…


●原 句 風鈴や南部の里に父母の亡く

◑添削句 風鈴や南部の里の父母の亡く


●原 句 孫娘おとなびてきた夏休み

◑添削句 孫娘おとなびてきし夏休み


●原 句 白帆立つ夏の浜辺に拾ふ貝

◑添削句 白帆立つ夏の浜辺に貝拾ふ


●原 句 異人名のおぼえられぬやところてん

◑添削句 異人名のおぼえられないところてん


●原 句 天道虫飛び立つ先の日の満てり

◑添削句 天道虫飛び立つ先の日の光


●声を出して句を読もう

俳句は、五七五という韻律(リズム)で成り立っています。このリズム、大事に生かしましょう。


その一番の方法は、声を出して読んでみることです。


自分の句も、人の句も。


そうすることで、自分の句ならば、苦労の推敲、成功


することでしょう。


●天道虫天道虫と子らの声


これを五七五のリズムで読んでみましょう。


てんとむし てんとうむしと こらのこえ


となります。


「天道虫」を文字通り


「てんとうむし てんとうむしと こらのこえ」


と読んでみると、その差異がよくわかるでしょう。


子供らが、てんとむし てんとうむしと大声を出して


叫んでいることが「てんとむし」と読むことでよく分


かります。さらに、更に数人仲間がいる事まで分かり


ます。


例句を挙げませんが、舌をかみそうな表現では、この


ような情景や言外の言が表現できません。


俳句表現の最大の武器は、このようにリズムを使って


言外の言を表現できることです。


うるさく言えば、この句、「子らの声」を「声のす


る」とする、という選択もあるでしょう。



7月、柴又界隈吟行  2015・7・7

     当日作品


          

舟渡赤詰草に靴濡らし          イカ

梅雨茸矢切の渡今日休み

睡蓮や鯉を尉とも姥かとも

肝吸を昼餉に通す梅雨の隙

梅雨晴間寺紋輪違五智如来


          

夏草の防空壕の跡とあり         チシ

駅員の団扇配りてをりにけり

回廊を静かに歩む半夏かな

拝見の日本庭園雨蛙

夏燕サッカー少年河川敷


          

夏雲のラグビー試合始まりぬ       オミ

夏つばめ江戸川土手を旋回す

梅雨晴間矢切の船は向う岸

しっとりと梅雨の最中の山本亭

濡れ縁に滝音聞いてをりにけり


          

縁側を睡蓮の風吹きぬける        アノ

舟留めに渡舟三艘梅雨晴間

梅雨晴間空に自在の鳥の声

青葉若葉して対岸の国府台

集合は単線の駅夏つばめ


          

一群のラグビー少年夏つばめ      アヒ

縺れ来て草に沈みし梅雨の蝶

睡蓮を揺らすは池の何ならむ

黒揚羽木の間隠をただよへる

涼風や縁側に足投げだして


          

夏つばめ瓦葺なる長屋門         ミノ

川へ出てまた返しけり夏つばめ

滝音の届いてをりぬ大広間

江戸川の芝刈る男無表情

捩り花約束ひとつ違えけり


          

御神水かけて蛇塚苔の花         イア

蓮の葉の水滴一つ題経寺

梅雨空の緑青濃き甍かな

山本亭とんぼ休める池の石

長屋門共に潜るは揚羽蝶


          

白南風の繋ぎ止めある渡舟かな      ヤミ

夏つばめひらり眩しき川の波

口ずさむ寮歌一節捩り花

御仏を拝す間つかふ団扇かな

鰻食ぶ焼ける間の良き老舗なり


          

睡蓮や石橋奥の闇つづく         トンボ

睡蓮の花に翳生む魚影かな

愚者は愚者なりに見てゐる未草

歩きつつ団扇を使ふ帝釈天

吾喰いし鰻は何になるならむ