◎2016・4月 定例句会 2016・4・24

入選句

 

卯波寄す一の鳥居に来てをれる    チシ

電線の雨だれ走る啄木忌       ナミ

目印は青木の花の門構        ハセ

母親を捜す放送潮干狩        シケ

甘茶仏園にもも組さくら組      イカ

病気持ちばかり集まる花見酒     チシ

勤行の新発意の声朝ざくら      イカ

原節子展の鎌倉春の行く                     ヤミ

風戦ぐ一列縦隊葱坊主        イケ春耕や畦に背広のセールスマン            アヒ

 

 

※添削句の原句

 

・卯波寄す一の鳥居に来てをれり

・甘茶仏園児もも組さくら組

・病気持ちばかり集まり花見酒

・行く春の原節子展鎌倉に

 

●兼題は、「葱坊主」でした。

投句された句を次に挙げておきます。

 

・男の子右へ倣える葱坊主

・葱坊主与太と呼ばれし友をふと

・キッチンは小松菜胡瓜葱坊主

・起立礼着席の声葱坊主

・葱坊主頬寄せ合うて畑の隅

・盛り土の溝深々と葱坊主

・葱坊主背筋伸ばしているように

・葱坊主一年生になりし孫

 

更に

・葱坊主黒白つかず暮れにけり

・葱坊主畑の中の大病院

・父母の俤のごと葱坊主

・せせらぎの音に親しく葱坊主

・三方を家に囲まれ葱坊主

・葱坊主の立ち並ぶ畑雀翔つ

 

という句でした。

 

前回、季語として詠むことの大切さをとりあげ、その使い方で間違いのない方法を示しましたが役に立っていないようです。

 

特に気になるのは、葱坊主から子供、という連想が多いことでした。季語には、すでに子供は擦り込まれていますからここから離れた発想が欲しいところです。

また、葱坊主の生えているところもみなが知っていますからこれもわざわざいうこともないでしょう。

 

●歳時記を見てみましょう。

 

ある歳時記の「葱坊主」の項抜いてみます。

 

まず、その解説

 

葱は、ふつう花の咲くまえに掘りとって食用にするが、種子をとるものはそのまま畑にのこしておく。晩春に葉の間から丸い茎をのばし、白い小花をたくさん球状につける。花は目立だない花だが、ひらく前には花の全部が膜でおおわれ、その形が橋の欄干の擬宝珠に似ているので、擬宝ともいい、同様に葱坊主ともいう。《本意》半残という俳人に「蝶の来て一夜寝にけり葱のぎぼ」の句があるが、多くは葱坊主、葱の花として詠まれる。形がかわゆく、愛らしいので、愛誦されるテーマである。

 

例句として次の句が取られています。

 

 

・葱の花ふと金色の仏かな  川端茅舎

 

・葱坊主雨降ればまたさむくなる 

              大野林火

 

・葱坊主あるひは蝶のあがりけり   

              安住敦

 

・葱坊主子を憂ふればきりもなし  

              安住敦

 

・葱坊主燈台に風鳴るところ 沢木欣一

・犬捕りの口笛巧し葱坊主  河村昇

 

・葱坊主さびしき故にわが愛す

             吉川千代子

 

・葱坊主いつしか意地を折りゐたり

              三好潤子

 

・葱坊主蝶々ばかりに槌られて 定弘衛

 

・かなしくて笑ひたくなる葱坊主

              山本馬句

 

朗誦し、句を味わいながら季語の働きを感じ取ってほしいものです。

 

2016・04 吟行  桜の上野・不忍池

          
不忍池に鷗来て居る朝ざくら        イカ
花のもと横笛を吹く男ゐし
花万朶上野水上音楽堂
残されし鴨かも岸に寄つてくる
花の昼スワンボートの出はらひし


          
不忍池を左右に分けし桜道         イケ
肩に触る桜の枝の柔らかき
花ぐもり池に漣鳥の群れ
手をつなぐ花の衣の夫婦かな
花満しビルもクレーンも静かなる
         


春深む弁天堂の銅の琵琶          アヒ
不忍池の水明り花明り
根方にも胴にも吹きし桜かな
花曇人に馴れたる群雀
雀来て眼白上枝に移

 

 

花の下異国の人のはしゃぎおり       アノ
歌声の池渡りくる春の昼
弁天堂へ花の中道通りおり
花の雲足に優しき遊歩道
指先の餌食う雀桜満つ
          


不忍池の淵まで敷きし花むしろ       シミ
くつ二足出入口ある花筵
人の居る事に馴れいる残り鴨
登り来し傍に桜寛永寺
花人のざわめくフリーマーケット
          


鳥帰る不忍池広くなり           オミ
異国人粋に着こなす花衣

満開の桜の中に弁天堂
外つ国の人の紛れる桜かな
満開の殊に上野の桜かな
          


はしり根も下草も芽吹きおり        ミノ
花曇池面に映る弁天堂
芭蕉碑も包丁塚も花曇
人生の節目ふし目の桜花
花冷や今日は上野か浅草か
          


花トンネル異国の娘ポーズとる       タリ
花越しに弁天堂の金宝珠
桜花舞い落ちる根元に土筆生え
花見酒人形踊る瓶の上
桜万朶水面にふれて波動く
          


不忍池を縁取るほどの桜かな        ヤミ
弁天堂の染井吉野に鳥の声
花散るや三三五五と貸しボート
土筆生ふそぞろ歩きの足元に
歩く間も色を変へゆく桜花
          


花冷や聖天島への門の錠         トンボ               
スワンボート池の真中に動かざる
花旺ん無縁坂への登り口
香ばしき匂ひも花の真昼かな
犬二匹控てをれる花莚