今月の定例句会報2016・7月24日

当日の入選句

アメリカへ孫を見送る雲の峰     ヒタ

つくも神灼けゐし粗大ごみ置場    アヒ

時折に父似と思う走馬燈       シケ

境内のラジオ体操夏休        シケ

夏見舞ふるさと切手など貼りて    シケ

夏休みわかしお一号自由席      チシ

中央線三鷹駅下車桜桃忌       ヤミ

緑蔭やひたすら手話のつづき居る   シケ

クラス会汗の一人が来て揃ふ     イカ

老翁の主張の頻りパナマ帽      シミ

河童忌や頬杖つきて顎なでて     ヤミ

風鈴や見上げてごらん夜の星     オミ

曲屋と共に古びる鉄風鈴       シミ

風鈴の荒荒しきをよろこばず     イケ

下町の風に風鈴吊るしけり      シケ

 

 

●入選句のうち添削してあるもの

 

原 句 アメリカへ孫を見送る夏の空

添削句 アメリカへ孫を見送る雲の峰

 ※不安な気持ちがよぎったのではないでしょうか。「夏の空」では、その気持ちが出てきません。「雲の峰」をもって気持ちを表現してみる方法があります。

 

原 句 時折の仕草父似や走馬燈

添削句 時折に父似と思う走馬燈

 ※自分のことでしょう。

 

原 句 緑蔭の二人は手話をひたすらに

添削句 緑蔭やひたすら手話の続き居る

 ※情景として表現しましょう。

 

原 句 老翁の主張しにけりパナマ帽

添削句 老翁の主張の頻りパナマ帽

 ※不自然なことばづかいをやめましょう。

 

原 句 龍之介忌頬杖つきて顎なでて

添削句 河童忌や頬杖つきて顎なでて

 ※芥川龍之介の忌日河童忌といいます。

 

原 句 曲り屋と共に古びし鉄風鈴

添削句 曲屋と共に古びる鉄風鈴

 ※「曲屋」は、熟語ですから送り仮名は要りません。「し」と「る」の違いは、句を味わって理解してください。

 

●添削

 

原 句 アルプスを踏む証しかなちんぐるま

添削句 アルプスを踏める証しのちんぐるま

 ※不自然の言い回しを修正。

 

原 句 白壁の象形文字の守宮かな

添削句 白壁を象形文字として守宮

 ※内容をよく整理してみましょう。なお、「かな」は、詠嘆の切字です。例句として

<折り取りてはらりと重きすすきかな>があります。多くは、このように一句をすらりと詠むときに遣われます。遣い方の一番難しい切字と言われています。

 

原 句 地下足袋の風鈴売りやゆるき坂

添削句 地下足袋の風鈴売りや坂の町

 ※情景を鮮明に。

 

原 句 ひたひたと追いつかれしは白雨なり

添削句 逃げ来ても追いつかれ居る白雨なり

 

 

●紙上句会で高点を得た句に異議あり!

 

   功徳ありや鬼灯市に人の出て

 

がそれです。

 

この句に点を入れた選者こそ責めるべきでしょう。

 

 

 

しながわ水族館・高山神社吟行   2016・7・2

●俳句として詠むには、大変難しい場所でした。それをどうこなすのか、それが問われます。 目の前の状況に目を奪われてしまうことなく。

 

●「ボツ」相当の句がありますが、そのまま載せています。

 

●その中で、注目句を赤で選んでいます。

収穫です。

 

●次回には、また、このよう俳句表現では難しい場所に敢えて挑戦してみましょう。         

 

●美辞麗句は、どんな時でも俳句には不要です。

 

 

作品抄

 

         
七月のアクアパークへ仲間たち  イカ
七月や女のいるか調教師
梅雨曇宇迦御魂はビルの間
隠れ耶蘇石灯籠や木下闇
ハンブルグステーキ梅雨の仕舞とも
          


夏の日の水族館の迷路抜け    オミ    

夏の日の海豚のショーや梅雨晴間
海月には海月の魅力涼しかり

合羽着て暑さ忘れる海豚ショー
夏帽子グリルつばめはすぐそこに
         


炎天やビルの谷間の水族館    ミノ
冷房の水族館の親子づれ
大都会の小さな社殿立葵
夏帽子みなそれぞれに個性持つ
夏服をひらひらひらと女子の行く
         


雑踏の改札抜ける炎ゆる道    イア
半夏の日水族館に来ておれる
狛犬に慶応とあり木槿咲く
海豚ショー待つ空席の夏帽子
炎昼の横断歩道急ぎ足
         


駅中の夏物セール見て過ぎる   チシ
水しぶき浴びる席にて海豚ショー
駅前に神社まします青葉風
梅雨晴間グリルつばめの予約席
人波を分けて炎天歩きゐる
          


イルカショー調教の娘の夏袴   シミ
炎天やアクアパークは竜宮城
東京の夏日忘るる水族館
品川の海は遠くへ夏帽子
三階の高さ泰山木の花
          


水槽をのぞき見ているこども汗  ハセ

夏の昼ロールキャベツを食べにけり
黒の絽の道行き着たる漢過ぎる
尾で水を叩き涼しきイルカショー
尾鰭にて水を叩ける水遊び
          


半夏の日ショーの海豚の立泳ぎ  アヒ
水しぶき上げて涼しきイルカショー

夏帽子観覧席に置かれあり
赤鱏の腹の白さの翻る
予約席まづ「とりあへず生ビール」
          


渦を生み海豚涼しく回遊す    アノ
真白なる海月変幻乱舞かな
梅雨晴やアクアパークに人の波
変貌の街に立ち居る半夏の日
老若の声たて笑う夏のショー
          

山 田 南 耳
照明に海月の命踊りをり    ヤミ
水槽の頭上を鱏の動かざる
イルカショー終れば汗の吹き出て来
石仏のマリア像らし半夏生
その昔宿場町てふビール酌む
          

 

夏の日の水族館の闇にゐる  トンボ

炎天やAQUAPARKといふ館
冷房の館内戦ぐイルカショー
イルカショー待ちゐる開始汗拭ふ
国道も海も見下ろす木槿かな