◎今月の定例句会・新年句会     2016・1・24

入選句

 

店先に箒湯たんぽ鼠取         オミ

風花やお不動脇に甘酒屋        イケ

松納夫への地下足袋真新し       コフ

人生の節目傘寿の除夜の鐘       タリ

初夢や歌いて居れるガンダーラ     ヤミ

冬の陽は部屋の奥まで入りにけり    タリ

百歳に四年の母や実千両        シケ

大寒や工事現場の槌の音        ミノ

俥夫立に声かけらるる四日かな     イカ

初詣土産の目当てはじき猿       アノ

二巡目の声の揃える火の用心      イア

東京の今年の冬に深呼吸        イア

大寒や医刀(メス)入りし身の違和感す タリ

風花や北のホテルの二重ドア      アヒ風花の養生の湯につかりおり      ナミ

風花や峠越え行く郵便車        コフ

風花の一瞬われをかざりしか      ハセ

 

●俳句の要諦三原則

・われ

・只今

・眼前

これを備えている俳句のインパクトの強さを感じさせる句が登場しました。

 

・風花の一瞬われをかざりしか

 

※「われ」という語があるとないとかということはでなく、その句にわれ(自分)が臨場感をもって色濃く出ているということに注目しました。その一瞬に込められた感情が無限に広がります。無心の一句。

 

●入選句のうち、添削前の原句

 

・雑貨屋に箒湯たんぽ鼠取り

・風花やお不動前の甘酒屋

・松納め夫の地下足袋真新し

・初夢や唄いて居れるガンダーラ

・冬の陽は部屋奥までも入りにけり

・俥夫に声かけられてゐる四日かな

・東京の今年の空に深呼吸

・大寒や医刀(メス)入りし身違和感ず

・風花や養生の湯につかりおり

・風花や峠を越える郵便屋

 

※印をつけて居りませんが、どこがどう直っているか確認してください。

 

 

 

●気になる句

 

・初夢にあらわれて夫恙なし

※夢に現れた夫が恙ないという句のようです?

一句の主人公は「われ」。こころに立入るようですが〈恙なし初夢に夫現れて〉の意として受け取りたくなります。

 

・初雪をすこし掬いて母の手に

※この句では、すこし掬っているのは確かに「われ」ですが、そういうことの説明になっています。作者の優しさを出していますが、いかにもそうしていますという感じがしてしまいます。

 

・寒雷や終活講座誘われて

※誘われた時の感情を季語「寒雷」で現わしたところ、俳句の骨法を踏まえていて好感が持てます。「終活講座」という誰も彼もが話題にする事柄ですからなにか「他所事(よそごと)」で、心に迫る臨場感がありません。

 

 

・着ぶくれて夕餉支度の小買物

※何もかもすべて言いつくしており、読者の立入るところがありません。夕餉支度であれちょっとした買いものに決まっています。小買物など言わなくとも、例えば、〈着ぶくれて夕餉支度の靴を履く〉とすれば読者は、外出される、その場の情景を思い起こすことでしょう。〈着ぶくれて夕餉支度ガス点ける〉とすれば、厨に立つ姿を思い浮かべることでしょう。

 

俳句は、読者が完成させてくれます。

 

・風花やいしぶみのある峠みち

※峠道のどこに居るのでしょうか。漠然とした内容ですが、作者の立っている場所をはっきりさせることで、「われ」「眼前」「只今」の句になるように思えます。

今居るところを峠口だと断定すれば、〈風花やいしぶみありし峠口〉と云う句になるでしょう。これで、漠然とした情景が立ちあがってくることでしょう。

 

・参道を登り七草ふるまわる

※「七草ふるまわる」では、七草粥へ入れる

「七草」のことなのか「七草粥」のことかはっきりしません。多分七草粥を戴いたのかも知れません。いずれにしてもふるまわれたことを説明している句になります。

〈参道を登り七草粥の列〉とすることでそこに並ぶことになる「われ」などが言外に立ち上がってくることでしょう。

 

・風花や嫗のれんをくぐりたる

※「嫗」と書かれていますが、どういう人なのか全く手掛かりがありません。自分の事であろうと見かけた景であろうと、そこに「われ」の視点あれば、「われ」がどう見たかということで一句は成立します。その手掛かり?

縄のれんをくぐるようなお人であれば、〈風花や嫗潜れる縄のれん〉となります。「紺のれん」ならば、別の人物像に。

 

 

 

 

下谷七福神めぐり吟行 2016・1・7

●下谷七福神と番外の淨閑寺

 

 ・寿老神(元三島神社)

 

 ・福禄寿(入谷鬼子母神)

 

 ・三面大黒天(英信寺)

 

 ・毘沙門天(法昌寺)

 

 ・朝日弁財天(弁天院)

 

 ・恵比寿神(飛不動)

 

 

 ・布袋尊(寿永寺)

 

作品抄

 

葉牡丹や紅一点の神祀る         アヒ

福詣鰐口を打ち鈴鳴らし

罅走りゐる神前の鏡餅

哄笑の布袋尊像石蕗日和

人日や徒で巡りし寺社七つ

 

          

駅頭に集いて御慶交し合う        アノ

町会のお茶の接待福詣

寒梅や念珠の音のからからと

冬桜スカイブルーの寺の空

初写真毘沙門天の御堂前

 

          

七福神記念写真を鬼子母神        ハセ

新年や青竹手摺の寿老神

弱る足友の腕借り初詣

下町の三面大黒梅の咲く

畳針供養塔あり冬桜

 

          

受験子の合格願ふ福詣          チシ

暖かや地蔵の供花に一花足す

福詣老いも若きも八千歩

七福神願ひは健康惚け防止

飴と茶の接待受ける布袋尊

 

          

松竹の音たて燃える松納         オミ

桜の芽ふくらんでいる寿老神

七草を食べて詣りし鬼子母神

接待のお茶を賜り冬温し

冬桜菩薩の像の傍に

 

          

下谷なる古き家並と七福神        イケ

七福神巡りて下谷身に添える

賽銭の音のはずめる福の神

飴三種家に求めし福詣

七福神巡り終えたる八千歩

 

          

七福神寿老神より歩き初む        ヤミ

枯木晴れ入谷に古きレストラン

餅花や亡き人思ふたこ地蔵

福参りの数珠を鳴らせし根岸かな

冬うらら賜る今日や福詣

 

          

七福神詣の列の途切れけり       トンボ

救世観音像の背負へる冬桜

一福に長く関はる冬桜

普茶料理「梵」へ気の行く福詣

 

新吉原診療所への矢印福詣

 

※案内図を下に載せて居りますが、せっかくの下町めぐりでしたが、題材を広げてその雰囲気を詠み止めることにも留意されると更に賑やかな句が揃ったことでしょう。