◎2016・3 定例句会  3月27日

今月の入選句

 

晴好雨奇わが古雛を仕舞けり      チシ

辛夷咲く道を左へ和菓子店       ミノ

壇上に直角の礼卒業子         アヒ

ふきのとう信濃の土のこぼれけり    シミ

籤ラムネ麩菓子水飴うららけし     アヒ

囀りや街のカフェのナポリタン     ヤミ

西に日の廻りてをりし寝釈迦かな    イカ

芽柳のゆれる銀座の一等地       イケ

芽柳や川辺の蔵の喫茶店        シケ

 

 

◎添削して入選とした句

 

原 句 辛夷咲く道を左に和菓子店

添削句 辛夷咲く道を左へ和菓子店

 

原 句 くじラムネふがし水あめ店のどか

添削句 籤ラムネ麩菓子水飴うららけし

 

原 句 芽柳のゆれて銀座の一等地

添削句 芽柳のゆれる銀座の一等地

 

原 句 芽柳や川辺に蔵の喫茶店

添削句 芽柳や川辺の蔵の喫茶店

 

●季語を季語として使おう!

 

添削句 芽柳のゆれる銀座の一等地

 

としましたが、これではまだまだ詰めが甘い。

 

季語を季語として使っているとは言えません。

 

芽柳という題では、必ず同じよう文言が出てきます。

 

芽柳の風のにおえる

芽柳の風の形に

芽柳の丈のよろしさ

芽柳のもつれつつ

芽柳の揺れて

風の自在や柳の芽

芽柳のゆれて

芽柳に光まといし

芽柳の

 

などいずれも説明で、芽柳の様子を描いていることが分かります。

 

季語として「芽柳」を使うとすれば、

 

「芽柳や」

 

です。「芽柳」といえば、その生えているところはイメージとして浮かんでくる所がいくつかあるでしょう。そしてその鮮烈な緑色から春の到来など明るいイメージが浮かびます。

目についた芽柳のあれこれを細かく言わなくともこのイメージを利用する事が季語を季語として使うことです。

 

その季語の芽柳に、何を取り合わせるか。これが俳句の表現の形です。

 

  芽柳や川辺の蔵の喫茶店

 

その例がこれです。芽柳の立ち並ぶ川辺にある喫茶店の様子が目に浮かんできますね。

 

これが、「川辺に」とすると景ではなく、そういう場所の説明になっていることに気付くはずです。

 

もしこのことが分かるならば、

 

  芽柳や我よりほかに人見えず

 

の句にも理解が行き届くでしょう。

 

柳といえば、多くは川辺に植えられる木ですね。

 

この芽柳は、一本植えられているものではなく、この川辺のような、そういう場所と想像され、その空間が今、無人の状態ということを描いた句であることと分かることでしょう。

 

細かい説明をせずにそう思わる表現を心がけることが大事になります。

 

・ここから、話を銀座の柳の句にもどります。

すでに、

 

   芽柳のゆれる銀座の一等地

 

には、欠点があることが分かるでしょう。

 

銀座の中でも更にここぞという一等地と言われるところがありますが、例えば、土地評価の高い所がありますが、そういうことを詠われているように思えてきて興味はそこに行ってしまいがちですね。

 

銀座といえば、歌にも歌われているように柳ですね。

 

芽吹きの始まった柳のある、今私がいる、こここそが銀座の一等地だという思いを持ったのだとすれば、誰にも文句のつけようのない一句になることでしょう。例えば、私にとっての一等地…

 

   芽柳や銀座のここぞ一等地

 

完成している句となっている句とも思えませんが、そういう見方で季語を季語として使うことに心がけて欲しいと思います。

 

もう一度整理しますと

 

季語、五文字と

季語の説明ではない

七五に収まる情景や思いを

取り合わせる

 

ということが俳句。

 

 

今までのことが理解できているならば、

 

●しやぼん玉ぱちんと稚児のおどろきぬ

 

という句でいえば、季語について

 

大変な思い違いをしていることに気が付くはずです。

 

季語の「しゃぼん玉」は、ぱちんと弾けません。

 

 

季語とは、季語を単純にポンと置くだけで、その季語によって、経験を呼び覚まし、そのことをこれを読む人々と共有し一句の内容を深めてくれるものとなります。

「ぱちんと弾けるしゃぼん玉」は、この様な、ただそれだけの説明になっていることに留意してください。

 

蛇足ながらもう一度念を押しておきます。

 

 

 

◎吟行 向島百花園 2016・3・5

          
草だんご子育て地蔵坂の上              イカ
扁額と柱聯を読む梅の昼
梅真白ガイドはじまるアナウンス
花木五倍子狂言塚とありにけり
結界のこちら馬酔木の咲いてをり


          
墨堤の子育地蔵うららけし         イア
啓蟄や百花園に来ておれる
水温む人の出ている土手通り
まだ開かぬ木五倍子の房を見あげおり
青空の石橋畔猫柳

 


留石の御成座敷や梅の花          オミ
長閑さのいつか来た店パスタ店
紛れ無く存在示す犬ふぐり
梅の香や傷持つ松の幹由来
だんご売り長閑に客を待っており

 


あたたかや辻に小さき地蔵堂        アヒ
鳥声や御成屋敷の春障子
木の芽晴池の面の平らかに
啓蟄や何を啄む鳩雀
春昼といふ寧けさの中にをり
          


句碑並ぶ小道に木五倍子枝垂れいる     アノ
梅の香の墨堤通り地蔵堂
バスで行く啓蟄の日の百花園
姿勢よく園内ガイド木の芽風
きびだんご売る屋台出てのどかなり

 


春風の思いのままの百花園         シミ
木の芽垣過ぎて土橋を渡りけり
湧水のゆるやかなりし猫柳
せせらぎを離れたところふきのとう
花あしび続く小径に句碑多し
          

 

うららかや鳩が来て飲む甕の水       チシ
和太鼓の響く駅前日永かな
啓蟄や地蔵尊への奉納単
梅日和子供の声のする公園
誰かゐて芽柳ゆれる向島

 


あたたかや百花園までバスハイク      ミノ
梅の花バスを下りれば地蔵尊
「みちしるべ」とふ紅梅のありにけり
ものの芽や明日あることの確かなり
梅日和水琴窟をためしけり
         


抱一の潜りし門ぞ梅屋敷          ヤミ
読みくだす芭蕉の句碑や春日向
耕しの園庭に満つ春の色
脇道の木五倍子莟を挙げにけり
下町の垣根の低し花馬酔木
          


紅梅や御成座敷の小高きに        トンボ
紅梅や春夏秋冬花不断
梅東風や金鈴舎道彦碑
行き過ぎし一歩を戻る猫柳
木の芽風隠れてをりし筒井筒