2010・10月

トンボの雑詠抄

思はざる木の実にうたれ秋深む

秋の夜テレビに竹田の子守唄

この頃や夜寒なんぞを懐かしむ

末枯るる黒板塀と宅配車

胡桃割る音楽わつと湧きだせり

ひそひそと秋の夜すすむ喫茶店

秋深む直立不動の吾亦紅

秋風を吸ひ込みゆける河馬の鼻

アンテナを揺らして烏立ちて冬

 

 

読み方雑感

原 句

秋の野に小躍るリュック子らの列

読み方

あきののに こおどるりゅっく こらのれつ

ポイント

行儀のよいきっちりとした句になっています。初心者としてはこれでよいのでしょうが、小躍る風景が見えてきません。昔は、小躍るは「雀躍」と書きました。文字のせいでしょうか。列を作って歩いて行く景なのでしょうが、それをそのまま描いた、文章のように行儀がよい所がこの句の欠点になってしまいました。

 秋の野に小躍るリュック子の行ける

 秋の野をリュック躍らせ子の行ける 

としたらどうでしょうか。まだまだ、表現の工夫の余地がありますが、原句よりは躍動感は出てきましたね。

 

 

原 句

絵図面にさがす坂の名暮れの秋

読み方

ええずめんに さがすさかのな くれのあき

ポイント

絵図面は、古地図のことでしょう。一枚一枚には、たとえば「市ヶ谷牛込絵図」などと描かれていますが、地域ごとに分かれているものは、「切絵図」といいます。それを見ながらあの坂はどこにあるのか探しているところですね。そこに行くためではなく、小説などに出てくる坂のありかを見つけているのでしょう。季語が「暮れの秋」となると、この状態にはそぐわぬようです。

 切絵図に坂の名探す夜長かな

季語の「夜長」は「秋の夜」のどちらかにすれば、ゆったりとすごす秋の夜の感じになります。

 

原 句

間引き菜やざるにあふるる秋の暮

読み方

まびきなや ざるにあふるる あきのくれ

ポイント

間引き菜のざるにあふるる秋の暮

とすればよいでしょう。「や」の使い方、自から得てください。

 

原 句

秋澄むや合唱聴こゆ中学校

読み方

あきすむや がっしょうきこゆ ちゅうがっこう

ポイント

事柄俳句ですね。物、景を詠むのが俳句です。なぜなら、使える言葉は五七五の一七文字しかないからです。「秋澄むや合唱洩れる中学校」ならどうでしょう。