思はざる木の実にうたれ秋深む
秋の夜テレビに竹田の子守唄
この頃や夜寒なんぞを懐かしむ
末枯るる黒板塀と宅配車
胡桃割る音楽わつと湧きだせり
ひそひそと秋の夜すすむ喫茶店
秋深む直立不動の吾亦紅
秋風を吸ひ込みゆける河馬の鼻
アンテナを揺らして烏立ちて冬
原 句
秋の野に小躍るリュック子らの列
読み方
あきののに こおどるりゅっく こらのれつ
ポイント
行儀のよいきっちりとした句になっています。初心者としてはこれでよいのでしょうが、小躍る風景が見えてきません。昔は、小躍るは「雀躍」と書きました。文字のせいでしょうか。列を作って歩いて行く景なのでしょうが、それをそのまま描いた、文章のように行儀がよい所がこの句の欠点になってしまいました。
秋の野に小躍るリュック子の行ける
秋の野をリュック躍らせ子の行ける
としたらどうでしょうか。まだまだ、表現の工夫の余地がありますが、原句よりは躍動感は出てきましたね。
原 句
絵図面にさがす坂の名暮れの秋
読み方
ええずめんに さがすさかのな くれのあき
ポイント
絵図面は、古地図のことでしょう。一枚一枚には、たとえば「市ヶ谷牛込絵図」などと描かれていますが、地域ごとに分かれているものは、「切絵図」といいます。それを見ながらあの坂はどこにあるのか探しているところですね。そこに行くためではなく、小説などに出てくる坂のありかを見つけているのでしょう。季語が「暮れの秋」となると、この状態にはそぐわぬようです。
切絵図に坂の名探す夜長かな
季語の「夜長」は「秋の夜」のどちらかにすれば、ゆったりとすごす秋の夜の感じになります。
原 句
間引き菜やざるにあふるる秋の暮
読み方
まびきなや ざるにあふるる あきのくれ
ポイント
間引き菜のざるにあふるる秋の暮
とすればよいでしょう。「や」の使い方、自から得てください。
原 句
秋澄むや合唱聴こゆ中学校
読み方
あきすむや がっしょうきこゆ ちゅうがっこう
ポイント
事柄俳句ですね。物、景を詠むのが俳句です。なぜなら、使える言葉は五七五の一七文字しかないからです。「秋澄むや合唱洩れる中学校」ならどうでしょう。