トンボ、雑詠抄
冬に入る顔それぞれを新しく
古隅田川に水鳥着水す
寒風の中に咲きゐるシクラメン
掻き出せし落ち葉の下の地の温し
いにしへを思へば落葉前後ろ
瀧壺へ落葉一枚着きにけり
蔦枯れて明治の館捕縛せり
遺蹟への道へ一叢残り菊
寒々とこんにゃく閻魔の供え物
ニンニクも醤油も冬の香りかな
日の射せる辺りぞ浄土返り花
原 句
取っときのグラスポージョレヌ―ヴォーを
読み方
とっときの グラスポージョレヌ―ヴォーを
添削句
取って置きのグラスとポージョレヌ―ヴォーと
ポイント
落ち着きのないもにしているのが、「取っときの」です。しゃべり言葉としては、何の不自然さがありませんが、一句の中に置かれますと、どうも落ち着きがありません。「取って置きの」とすれば、その感じは解消されるでしょう。調べを整えて、説明調を取り除きました。
原 句
冬の空天地分けたる大甍
読み方
ふゆのそら てんちわけたる おおいらか
添削句
冬空を左右に分ける大甍
ポイント
「大甍」ということですから、想像されるのは、「大寺」でしょう。見上げる形になりますから、空を左右に分けているように見えることには違和感がないでしょう。空を天地に分けるということには、違和感が拭えないでしょう。
原 句
小春日や置傘のある無人駅
読み方
こはるびや おきがさのある むじんえき
添削句
小春日や傘置かれある無人駅
ポイント
「置傘」というと、普通、自分の傘を用心のために、置いておいてある傘を云うようですが、作者の生活パターンから考えてみて、無人駅に預けて置くということは、考えられません。旅行先か何かで出会ったその駅にはその駅を常時利用している人のためか、なにかで、傘が置かれていたのでしょう。そのように表現してみました。
原 句
立冬や母のおもかげ結城織
読み方
りっとうや ははのおもかげ ゆうきおり
添削句
立冬や母の形見の結城織
ポイント
「おもかげ」という情を押し出した表現は、どうでしょう。亡くなられた母であることがわかりますから、「形見」としてみました。実はこういう句は、多いので、さらなる工夫が欲しい所です。「情」ではなく、「もの」で表現することを意識してください。
原 句
立冬や母のおもかげ結城織
読み方
りっとうや ははのおもかげ ゆうきおり
添削句
立冬や母の形見の結城織
ポイント
「おもかげ」という情を押し出した表現は、どうでしょう。亡くなられた母であることがわかりますから、「形見」としてみました。実はこういう句は、多いので、さらなる工夫が欲しい所です。「情」ではなく、「もの」で表現することを意識してください。