今月の雑詠から
短夜を太平洋に明けにけり
食みこぼすフランスパンの夏めける
芍薬の開きて堕落はじまれり
バグダッド煙を上げる蚊遣豚
椎若葉一進一退草野球
眠たげに雲版のあり余花にあり
やまかがし噂に列のとどこほる
松風や心細げの蛇の衣
七輪の用意のすみし鮎の川
なあお前久しぶりなる青蛙
5月5日
春日部・宝珠花、大凧あげ祭吟行から
庄和町大凧音頭凧あがる
凧まつり竹とんぼうの飛び立てり
落ち凧へ送れてひとり駆け寄れり
風を得て大凧頭ぐいと立つ
小町組凧上げ和歌衆黒づくめ
夏立つや出番の順を凧の組
凧まつり土手を埋める魔法瓶
↓
読み方雑感
原句 東京に山あり青葉若葉して
読み方 とうきょうに やまありあおば わかばして
ワンポイント 東京の多摩地区は山々があります。そのような句とも思われますが、都心
にも山が無いわけではありません。上野の山、愛宕山と云われるとろはも
とより、山の手には山りあり、谷ありです。気がつかないで過ごしていま
すが、若葉の季節を迎えると東京にも山があったんだと思うことがありま
す。この句はそのような句としてとらえることもできます。作者は奥多摩
の句として作られたようですが、そうだとするとやや平板です。決め手に
なるものがあると、一句は光るでしょう。
原句 目が合って新茶の試飲勧めらる
読み方 めがあって しんちゃのしいん すすめらる
ワンポイント このままではそのようなことがあったという報告になってしまいます。
断ったのでしょうか、それとも「目が合って新茶の試飲しておりぬ」となったのでしょうか。そうだとすれば、作者の気持ちの変化が推察され面白くなると思います。