今月の雑詠
黒南風や青竹組める筒井筒
七厘も炭も積まれて鮎の川
日本の蜻蛉(あきつ)の臀●(となめ)見てをれり ●は口編に占と書く字
物売の電話のかかる梅雨晴間
山門の屋根に一八雲の行く
十薬や接骨院に人出入り
夏めけり笑顔絶やさぬボランティア
柱無きことに気づきし端居かな
夏帽子すこしく己秘するなり
夏百日加へて路次(ろし)半ばなり
翡翠の一点の青のこりけり
短夜の入るも出るもむらさきに
青梅の触れる音する夜なりけり
鬼瓦青葉若葉を従へて
水元公園吟行
ざわめける気配を金魚展示場
歌手あさみちゆきの歌ふ花菖蒲
風の来て風に応へて花菖蒲
ひとのもつ翳のそれぞれつつじの緋
薫風やテント長屋の陶器市
原 句 匂玉のしづくとなりて花菖蒲 ※旧かな遣いの句
読み方 まがたまのしずくとなりてはなしょうぶ
ポイント 匂玉は、誤記で、勾玉のことでしょう。花菖蒲から落ちるしずく(しづく)を勾玉 の形のように見立ててモノですが、このままではそのように読み取れません。つぎのようにしたらどうでしょう。「勾玉のしづくなりけり花菖蒲」
原 句 蚊帳吊りの金具残りし奥座敷
読み方 かやつりのかなぐのこりしおくざしき
ポイント 「蚊帳吊の金具」に違和感があります。「蚊帳を吊る金具残りし」または「吊蚊帳の金具」などと云いかえればどうでしょうか。語句を整えて「釣蚊帳の金具の残る奥座敷」。季語の蚊帳を活かしました。
原 句 夏柳渡しに猫と墨衣
読み方 なつやなぎわたしにねことすみごろも
ポイント これは、「夏柳渡し場猫と墨衣」とすればかっちりとした景がたちあがってきます。