2010・6月

今月の雑詠

 

 

黒南風や青竹組める筒井筒

七厘も炭も積まれて鮎の川

日本の蜻蛉(あきつ)の臀●(となめ)見てをれり   ●は口編に占と書く字

物売の電話のかかる梅雨晴間

山門の屋根に一八雲の行く

十薬や接骨院に人出入り

夏めけり笑顔絶やさぬボランティア

柱無きことに気づきし端居かな

夏帽子すこしく己秘するなり

夏百日加へて路次(ろし)半ばなり

 

翡翠の一点の青のこりけり

短夜の入るも出るもむらさきに

青梅の触れる音する夜なりけり

鬼瓦青葉若葉を従へて

水元公園吟行

 

ざわめける気配を金魚展示場

歌手あさみちゆきの歌ふ花菖蒲

風の来て風に応へて花菖蒲

ひとのもつ翳のそれぞれつつじの緋

薫風やテント長屋の陶器市

 

 

 

 

読み方雑感

 

 

原 句  匂玉のしづくとなりて花菖蒲    ※旧かな遣いの句

 

読み方  まがたまのしずくとなりてはなしょうぶ

 

ポイント 匂玉は、誤記で、勾玉のことでしょう。花菖蒲から落ちるしずく(しづく)を勾玉   の形のように見立ててモノですが、このままではそのように読み取れません。つぎのようにしたらどうでしょう。「勾玉のしづくなりけり花菖蒲」

 

 

原 句  蚊帳吊りの金具残りし奥座敷

 

読み方  かやつりのかなぐのこりしおくざしき

 

ポイント 「蚊帳吊の金具」に違和感があります。「蚊帳を吊る金具残りし」または「吊蚊帳の金具」などと云いかえればどうでしょうか。語句を整えて「釣蚊帳の金具の残る奥座敷」。季語の蚊帳を活かしました。

 

 

原 句  夏柳渡しに猫と墨衣

 

読み方  なつやなぎわたしにねことすみごろも

 

ポイント これは、「夏柳渡し場猫と墨衣」とすればかっちりとした景がたちあがってきます。