今月の四句八句

  トンボの句 雑詠抄

蔵書との別れのありて十二月

十二月八日未明ののぞみ号      東京駅

冬晴や西陣とんと音のせぬ

石在りて花の御所跡しぐれけり     大聖寺門跡境内

門跡の右近の橘枯桜           宝鏡寺門跡(百々御所跡)

のれんあり俵屋吉冨しぐれ逃げ

冬の雨不断桜も庭履きも         実光院

平八茶屋越えて八瀬なり冬紅葉

しぐれくる同志社大学赤レンガ

今出川通りを移るしぐれかな

しぐれきてしぐれ去りたる涅槃図に   本法寺

草紙洗い小町の故地やくさめする    小町通

西陣やつづれ屋帯屋冬の蝶

蛸薬師前にたこ焼き冬の夜        新京極

蛸薬師寅の薬師も十二月         新京極

寂光院までのしぐれの照り降れり    大原

踏みながら冬眠の虫思ひけり

冬に咲き御会式桜と云はれゐる     妙顕寺

いただきぬ初霜きんとん十二月     俵屋吉冨

思無邪といふ軸のかかりて師走来る  俵屋吉冨 

 

 

赤穂事件 

 

俵屋吉冨を訪ねたのは12月8日。祥雲軒と云う茶席の床に掛かっていたものを見ての即吟が

 

思無邪といふ軸のかかりて師走来る

 

の句です。赤穂浪士の一人小野寺十内の筆で、京都で、赤穂浪士の討ち入りを意識して、設えられていることに驚きました。

  

この句では、「しむじゃ」と読むようになっていますが、「思いに邪(よこしま)無し」とよむのでしょう。

 

十内は、赤穂藩の京都留守居役ですから京都の人にとっても身近なのかもしれません。大石内蔵助の右腕となってこの計画に遺漏のないように働き、派手なエピソードはなく、「仮名手本忠臣蔵」では、現行の上演の中では、その名は無かったように思います。

 

それぞれのところで、忠臣蔵は、語り継がれているのだなと、思いました。この時の同行者は、全員関西の人でしたが、今一つなところがあったというか、これという反応は無かったようにも思えました。京都は白足袋の世界。少し別世界と思っていましたが、京都がやっと身近に感じられました。

添えられた花は、白玉椿とトリトマラズの赤でした。この世界には、疎いのですが、この花の組み合わせは、楽美術館でも見かけましたので、一つの形としてこの季節を飾るものなのでしょう。