今月のトンボの句抄

 

流星や東京湾のあるばかり

ひぐらしや森に病院隣り合ふ

葉先まづ着きて倒れる桐一葉

赤とんぼこの指とまれなまこ壁

物落とす音のしてゐる蚊遣香

天の川今をし銀座4丁目

かなかなの本体追って行きにけり

翠嵐に水輪生るる桐一葉

健やかに山河ありけり青胡桃

いつのまにつばくろ帰ってしまうなり

帰港待つ人のしずかに秋刀魚船

来るのなら飛んできてみよ曼珠沙華

秋天の下に売らるる壺その他

三門の閉ざしてありぬ白桔梗

江戸城の虎口跡なり蛇穴へ

 

 

 

読み方雑感

原 句

絶筆となりし絵手紙切西瓜

 

読み方

ぜっぴつと なりしえてがみ きりすいか

 

ポイント

絵手紙は、その絵だけをいうような風潮がありますが、本来は、絵を入れて手紙のやり取りをしようと云う事です。もらった西瓜の絵の描かれているはがき、それを送ってくれた人に不幸なことが起こったのでしょう。このはがきがその人の絶筆か。そんな思いの句です。そうであれば、

 

 絶筆となる絵手紙の西瓜かな

 

これで、作者の深い思いが刻まれました。なにも「切西瓜」としなくとも想像されることです。リアルな表現は俳句には似合いません。

 

 

原 句

こおろぎと夕陽迎える生家かな

 

読み方

こおろぎと ゆうひむかえる せいかかな

 

ポイント

人ごとのような句ですね。

  こおろぎと夕陽の待てる生家かな

とすれば、作者の気持ちとなり、一句が生きてきます。