初夜の虫後夜の虫へと変りけり
爽やかにヒマラヤ杉の二抱へ
発信地不明なれども秋の風
鼻眉毛まつげに吹いて秋の風
ビー玉もおはじきも青秋の暮
秋の暮千円札を握りゐる
かはたれの露の気配の顔の上
しはぶきて全山の露浴びにけり
秋彼岸寂寥もつてにぎはへる
広前にまろびて露をもらひけり
見るものを見つとは云へず月を見る
鶏の声のしてゐる秋の暮
冷やかに谷中にありし鬼子母神
路地路地の寺寺からの金木犀
たそがれの物の形を梅雨の生む
料理の要諦
素材
腕
タイミング
ですね。
詳述しませんが俳句の要諦も同じ。
どんなに名シェフであろうと、タイミングが悪いと食べて貰えません。
タイミングとは、
満腹のひとには、どんな料理も食べて貰えないでしょう。
今月の句から。トンボが今、満腹だと思うのは…。その句の一例を。
逃げ隠れ出来ぬ残暑の日なりけり
巻き戻し出来ぬ人生秋扇
曼珠沙華炎えて煩悩絶ち切れず
百万本彼岸花燃え巾着田
まだ風に馴染まぬ色の曼珠沙華
手水吐くからかねの龍秋彼岸
平凡に生きて悔いなし草の花
反りかえる古刹の甍天高し
自分史はつぎはぎだらけこぼれ萩
コスモスや風の機嫌に逆らはず
死ぬ力残して秋の蟬鳴けり
味に飽きちゃったものから、見た目の盛り付けが平凡だったり、合っていないものや、なにやかや
タイミングが悪いばかりでなく、さらに満腹という悪条件。
満腹とと云いながらも、食後に甘いものが出ると、「別腹」と云って、食べられますね。これらの句には、「別腹」を誘う工夫をしてみましょう。まず素材です。発想の転換をして素材を吟味しましょう。味わったことのないような味付け、その腕をここで活かしてほしいと思います。