今月の四句八句 9月

トンボの雑詠抄

初夜の虫後夜の虫へと変りけり  
爽やかにヒマラヤ杉の二抱へ   
発信地不明なれども秋の風    
鼻眉毛まつげに吹いて秋の風   
ビー玉もおはじきも青秋の暮   
秋の暮千円札を握りゐる     
かはたれの露の気配の顔の上   
しはぶきて全山の露浴びにけり  
秋彼岸寂寥もつてにぎはへる   
広前にまろびて露をもらひけり

見るものを見つとは云へず月を見る

鶏の声のしてゐる秋の暮

冷やかに谷中にありし鬼子母神

路地路地の寺寺からの金木犀

たそがれの物の形を梅雨の生む

 

 

料理の要諦

 

素材

 

 

タイミング

 

ですね。

 

詳述しませんが俳句の要諦も同じ。

 

どんなに名シェフであろうと、タイミングが悪いと食べて貰えません。

タイミングとは、

満腹のひとには、どんな料理も食べて貰えないでしょう。

 

今月の句から。トンボが今、満腹だと思うのは…。その句の一例を。

 

逃げ隠れ出来ぬ残暑の日なりけり

巻き戻し出来ぬ人生秋扇

曼珠沙華炎えて煩悩絶ち切れず

百万本彼岸花燃え巾着田

まだ風に馴染まぬ色の曼珠沙華

手水吐くからかねの龍秋彼岸

平凡に生きて悔いなし草の花

反りかえる古刹の甍天高し

自分史はつぎはぎだらけこぼれ萩

コスモスや風の機嫌に逆らはず

死ぬ力残して秋の蟬鳴けり

 

味に飽きちゃったものから、見た目の盛り付けが平凡だったり、合っていないものや、なにやかや

タイミングが悪いばかりでなく、さらに満腹という悪条件。 

 

満腹とと云いながらも、食後に甘いものが出ると、「別腹」と云って、食べられますね。これらの句には、「別腹」を誘う工夫をしてみましょう。まず素材です。発想の転換をして素材を吟味しましょう。味わったことのないような味付け、その腕をここで活かしてほしいと思います。