残雪や蹴手繰りあへる鶏のをり
中吊に天皇陛下冴返る
残る鴨陸前橋とありにけり
釣堀に中りありけり龍天に
猫柳一朝玉のごとくなり
青き踏む古事記千と三百年
牡丹雪石だんだんと築地塀
北窓開く日月開くごとくなり
浮れ猫何やら被り来るなり
日の暮の微光とらへて猫柳
猫柳鉄壁として山のあり
微光して産毛そよげる余寒かな
水滴を引張るやうに釣る公魚
●原 句
筆置けば半紙に春の訪れり
●添 削
筆持てば半紙に春の訪るる
●ポインと
「訪れり」の「れり」は語法として誤り。「筆置けば」と「筆持てば」の違いを味わってください。
●原 句
残雪や村一望の峠道
●添 削
残雪の村一望の峠道
●ポイント
村を一望しているのは作者ですから「残雪の村一望」となります。
なおこの句、実景ではなく、例えば、富士山を描けと云われれば、富士山に太陽を取り合わせた例の絵のような安易さが感じられます。それは、「村一望」というありきたりの措辞のためでしょう。
今回は、切れ字の「や」の使い方の指摘のため取り上げました。
「残雪や」としてこの句を成立させるならば、<残雪や視界開ける峠道> とすればよいでしょう。視界が開けて見えたものが残雪と云う意になります。
●原 句
残雪やヒュッテのコーヒーモンブラン
●添 削
残雪やヒュッテにコーヒー飲んでおり
●ポイント
「モンブラン」を持ってきたことを、「やったー」と思っているように思えます。こういう事は、今後の俳句をする上でマイナスになります。
「残雪や」で切れて「ヒュッテにコーヒー飲んでおり」と、残雪とは直接かかわりのない文言を取り合わせています。これが二句一章と云う形です。俳句の80パーセントはこの形です。しっかり覚えましょう。
前掲の「残雪や」の句(原句)との違いを確認しておきましょう。
ただ、内容としては平凡で、多く類句がありますから、ヒュッテの中かをよく見まわして別のものを見つけましょう。それが発見です。
筆者の経験を基に改作するとすれば、<残雪やヒュッテを風の襲いゐる>。