有明の露の鐘の音蓮生寺
風の来て萩女郎花筒井筒
寄せる波踏みて更けゆく盆踊
いつの間に虫の夜となる筆硯
太白のまづ出て東京賑へる
ひと房の葡萄の重し箴言集
一粒は一語となれり黒葡萄
哀しみはのみどにありし黒葡萄
城跡を赤蜻蛉の囲みゐる
音もなく色なき風の山河かな
水勢の秋の音立つ山河かな
水槽に海月ひくひく秋暑し
秋暑し触れみて忠犬ハチ公像
一炊の夢から続く秋の雲
白桃の存外強情ものなりし
行く雲は行くに任せる風の秋
新涼や魚の煮つけと生姜みそ
ひぐらしや病院二つ並び合ふ
ひとこひしひとこひしなむ法師蝉
少年や竿と帽子と青胡桃
めぐりあひてみしやそれとも鉦叩
どれだけ遣える句だろうか?