◎今月の四苦八句  2013・10月

トンボの四苦八句 抄録

 

司法書士事務所つらなり焼薯屋

花芒小流れむかし国境

秋深む故に鬼平犯科帳

冬隣こころのままにありにけり

筆写せる句集にもらふ露の玉

なれるなら鬼の子がよしアドバルーン

家ごとに順々灯る秋の山

秋思とは今を無縁に遊びけり

晩秋の没日に富士の只黒し

賑やかに笑ひ声立つ小鳥来る

はじめての道を歩みて秋惜しむ

己が影ますます黒し秋惜しむ

白菊やからだに馴染み来し作務衣

月名も町の灯も秋深し

面構へよき秋刀魚よと溺れけり

伝道の二人組来る杜鵑草

水引の花や血糖値の上下

紅葉に旭加はる奥穂高

もの落し音のたちたる秋の暮

觔斗雲などと思うて秋の雲

臭木咲く大人(うし)と書かるる墓石あり

白菊や青眼もつて坐ししゐる

落鮎に面体らしきもののあり

床軋む音を立てゐて秋惜しむ