トンボの句抄
かもじ売る通りに冬の来てゐたる
目をきらきらさせてひと来る冬の来る
冬の来る室内空間狭くなる
一の酉二の酉のがす三の酉
靴音の冬の響きへ変りけり
バス停にバス待つ冬の来りけり
人抱くやうに枯菊くくりけり
旅にゐるこころ生まるる枯野かな
誘はるる予防接種も冬構
一日の始まる落葉どっさりと
落葉のふるふるふるふる行き交へる
踏み行けば落葉の声の聞こえくる
劇場バス十台ほども小春の日
子の笑ふ声の聞こゆる落葉かな
十数へ鬼の振り向く落葉かな
凩や都電に乗つて鬼子母神
魚は眼を開きて眠る十二月
生牡蠣ののみどを通るさやうなら
洋館の全身纏る蔦紅葉
水鳥や仙厓義梵見てきたる
虎落笛首都圏ニュース845
凩や天井川の紺の色
このごろや指の先から冬めける
冬めけることの何やら懐かしき
塔へ行く石段濡らす片時雨