◎今月の四苦八句   2013・11月

トンボの句抄

 

かもじ売る通りに冬の来てゐたる

目をきらきらさせてひと来る冬の来る

冬の来る室内空間狭くなる

一の酉二の酉のがす三の酉

靴音の冬の響きへ変りけり

バス停にバス待つ冬の来りけり

人抱くやうに枯菊くくりけり

旅にゐるこころ生まるる枯野かな

誘はるる予防接種も冬構

一日の始まる落葉どっさりと

落葉のふるふるふるふる行き交へる

踏み行けば落葉の声の聞こえくる

劇場バス十台ほども小春の日

子の笑ふ声の聞こゆる落葉かな

十数へ鬼の振り向く落葉かな

凩や都電に乗つて鬼子母神

魚は眼を開きて眠る十二月

生牡蠣ののみどを通るさやうなら

洋館の全身纏る蔦紅葉

水鳥や仙厓義梵見てきたる

虎落笛首都圏ニュース845

凩や天井川の紺の色

このごろや指の先から冬めける

冬めけることの何やら懐かしき

塔へ行く石段濡らす片時雨