◎今月の四苦八句  2013・3月

 

当月抄

 

ベーカリー前に人垣春疾風

畳屋の在りて見てゐる春の風

踏みたるはさみせん草の花なりし

彼岸会へ靴を揃へて上がりけり

初花や山門不幸の門構へ

鳥雲に紙の袋に菓子貰ふ

釣竿を担ぎてみたき春の雲

葦焼きの煙立つ見ゆ麦畠

春燈の込みてあふるる東武線

三月や剃刀傷へ風当たる

糸遊を抜けてこの世へ人と犬

春光や目の前麦の勢ぞろひ

花桃や段々物憂くなりにける

春昼の物憂き手足生れける

春昼や語るごとくに独り言

初蝶や石ころなれど仏さま

芹を食ぶ眼も耳も歯も使ひ

 

露坐物のむらさき匂ふ朧かな

夕去りて朧の中の露坐仏

川音に人声交る朧かな