◎今月の四苦八句   2014・1月

雑詠抄

 

寒林に光芒立ちし人の逝く

多羅葉に恋の字のある女正月

裸木の男気見せる一枝あり

一瞬に一生のあり寒明くる

白鳥の声の集まる冥さかな

凍蝶や恋にあらぬ手を握る

凍蝶やとぼその中を思ひゐる

風花のいろはにほへと言葉降る

風花や浄瑠璃姫の薬師堂

中空に風花のあり嶺のあり

冬眠の蛇の寝相を思ひゐる

白鳥の水面に立ちて蹴り翔てる

自から光を放つ寒卵

冬帝の渡りこしたる絹の道

馬二匹顔を寄せ合ふ初日の出

なんとなく楊枝咥へる空っ風

頭から足へ抜けゆく空っ風

葛湯とくぐりぐりぐりと愛すなり

水仙や円みを持てる水平線

卵黄の二つの円し寒に入る

雪釣に雪のまたるる百花園

大寒の微塵となりしわがことば

着倒の鳴りて開場初芝居

白鳥の中の一羽の羽ばたけり

寒晴や八十八箇所御砂踏み

冬の夜の己が影伸び縮んだり

校塔に下界見下す寒鴉

思はざる煮凝を得し日なりけり

寒九郎棒の如くに水を飲む

夜を騒ぐ鳥の気配の寒の入

はつたいを含みて冬の山河あり

今年また増えて咲きたる福寿草

誰袖屏風見てゐる冬の日なりけり

冬眠の彼らを想うて寝まるなり

大寒の日暮れの遅くなりゆけり

大寒や木賊の丈の先に空

南天や門前雀羅張りにける

大寒や襟裳岬を聞いてゐる

大寒となりし日なりきとろろ蕎麦

メトロからエスカレーター初芝居

雪音の太鼓鳴り継ぐ初芝居

朝風呂へ夜の明けゆく二日かな

風孔二つ持つ千木初御空

元日の一句めでたく生れけり

自動車の音の途絶へて年の立つ

己が影つれて歩める初詣