◎今月の四句八苦      2014・12月

雑詠抄


火の色や背中に寒さ集まれる

眼球へ目薬寒く墜ちにけり

空っ風前方後円墳これにあり

縒りすすむ注連縄の尾の反転す

雪吊のハープのごとく音立てる

風あれば雪吊ははたヨットの帆

初雪の渋谷の街の三千里

初雪のハチ公前に人を待つ

初雪や渋谷NHKホールまで

山茶花の垣根回りて遭える人

家建てる音の聞こゆる冬の雨

寝坊して十二月八日過ぎにけり

未知の日へ彼の山の眠りけり

寒き日へ鯛もオコゼも揃ひけり

もののふの幾人眠る枯野かな

短日や小栗判官説経節

うとうとと小春日和の過ぎ去れり

葱一本下げるをとこと出遭いけり

銭湯へ持ち来る寒き顔ばかり

霜降りる気配に更ける吉野葛

葛湯溶く夜の沈黙更けにけり

冬至の日日射しの深く雑木山

日の光雑木林へ冬至来る

冬の日の日矢の遍し露座仏

大根煮る匂ひ満ちくる夕べかな

似顔画く人の深深冬帽子

カテドラル教会寒し靴の音

暖炉よく燃えるモナリザモジリアニ

湯豆腐へ達者の顔を持ち寄れる

いつの間に羽子板市の中にゐる

はらいそと云う語飛び出る龍の玉

冬の日のすつかり暮れて影もなし

三三五五落葉残して掃きにけり

柚子の棘あることも一壺天

怒れるは愚かなりけり石蕗の花

松毬を三つ拾うて年の暮れ

歳月の色を映せる龍の玉