雑詠抄
山茶花の花の越境許しけり
見てゐるは十月桜菖蒲園
篠笛の吹きても鳴らぬ冬はじめ
鼻先へ風の来てゐる冬はじめ
丈だけを残してをれる枯鶏頭
初霜の報の新聞御御御付け
納豆も御御御付けにも冬の来る
木枯の築地場外市場にも
瀬を早み岩に吹かるる冬紅葉
園内に一人となりし返り花
四方仏水盤腰掛返り花
博物館裏の庭園返り花
麦とろの喉を通れる北の風
北風の音の鳴くなり動物園
風の来て欅落葉の立ちのぼる
火の色の冬百日のはじまれり
赤門を潜りて這入る敷松葉
敷松葉左近も右近も眠りゐる
喫茶去と床几のありし敷松葉
つはぶきの黄色はまさに冬の色
石蕗の花日光下駄の置かれあり
木枯のこどもに還ること出来ず
冬の河川の隠居のゐるさうな
いつの間に雁の来てゐる富士の山
かりがねの音とし聞かば筑波山
富士筑波白鳥渡り来て居たる
冬枯れの関東平野煙り立つ
沼ありて光を弾く冬はじめ
返り花身辺なんぞ騒がしく
返り花山並黒く立ちゐたり
連山はただただ黒し冬落暉
シーン今ガンマン落馬葛湯溶く
霜の降る気配の更ける葛湯かな
枝折れる左近の桜敷松葉
今月不作