◎今月の四句八苦     2014・11月

雑詠抄

山茶花の花の越境許しけり

見てゐるは十月桜菖蒲園

篠笛の吹きても鳴らぬ冬はじめ

鼻先へ風の来てゐる冬はじめ

丈だけを残してをれる枯鶏頭

初霜の報の新聞御御御付け

納豆も御御御付けにも冬の来る

木枯の築地場外市場にも

瀬を早み岩に吹かるる冬紅葉

園内に一人となりし返り花

四方仏水盤腰掛返り花

博物館裏の庭園返り花

麦とろの喉を通れる北の風

北風の音の鳴くなり動物園

風の来て欅落葉の立ちのぼる

火の色の冬百日のはじまれり

赤門を潜りて這入る敷松葉

敷松葉左近も右近も眠りゐる

喫茶去と床几のありし敷松葉

つはぶきの黄色はまさに冬の色

石蕗の花日光下駄の置かれあり

木枯のこどもに還ること出来ず

冬の河川の隠居のゐるさうな

いつの間に雁の来てゐる富士の山

かりがねの音とし聞かば筑波山

富士筑波白鳥渡り来て居たる

冬枯れの関東平野煙り立つ

沼ありて光を弾く冬はじめ

返り花身辺なんぞ騒がしく

返り花山並黒く立ちゐたり

連山はただただ黒し冬落暉

シーン今ガンマン落馬葛湯溶く

霜の降る気配の更ける葛湯かな

枝折れる左近の桜敷松葉


今月不作