◎トンボの四苦八句  2014・3月

当月抄

 

つくしたちつくしの陣を構へけり

春暁の音を立てずにゆきにけり

岐れ道どちらも花の道なりし

春の雷このまま行こか戻ろうか

夜の町のむらさきの色春の雷

アドバルーン揚る青空クロッカス

水音も豆腐の角も彼岸入

銭湯の煙上げゐる彼岸入

彼岸入往きあう人もなき日なり

高箒倒してゆきし恋の猫

新吉原跡地の軒のチューリップ

雛僧のあひ固まれる彼岸寺

花冷の豆腐の角を戴きぬ

一点の光遍し菫花

この道の一本道の辛夷かな

街路樹に寒の戻りの来て居たり

春光や雀の嘴を水跳ねる

交む蟇瑠璃光如来の宝前ぞ

せせらぎを追うてまろびしいぬふぐり

桃の花時間に消ゆる望遠鏡

春昼のレコード盤と万華鏡

竹矢来つんつん赤き牡丹の芽

一蝶の渡る水面のぴしぴしと

抓みたるものに蝶々のからだかな

木の芽張る飯盛山のふくらめり

鳥雲にスカイツリーの残さるる

春眠の覚めてかぐはしきものに風

芽柳の通行禁止の石の橋

芽柳やヤクルトおばさん向うから

芽柳や温泉街の石の橋