◎トンボの四句八苦  2014・4月

 

当月抄

 

どこからかオルガンの音春惜む

花種の袋名札に春惜む

鬢眉の白髪一本春の行く

春の行く天地逆さに砂時計

接待所夕顔観音御開帳

人も名もともに消えゆく暮春かな

咲き満ちて寂しきものに花蘇芳

象キリン河馬に猿山春の雲

虻の来る海に真向うカフェテリア

カフェテリア壺のダリアの向う海

花冷のひと日を茶道名物展

花冷の眼空(うろ)なる増女

物売の電話を断てば夏の来る

影連れて人の歩める花蘇芳

たんぽぽの絮の飛び立つ飛行船

蒲公英や地球はいつもきな臭し

失へるものこそ恋し暮春かな

なに事もなくとも暮春の日なりけり

みの虫と云へる役者の亡き暮春

蒲公英や平和を地球の果てまでも

さつき咲く妹山背山田鶴の橋

蝶番の軋むも春の行きにけり

ぎしぎしと蝶番軋む暮春かな

夢殿の開扉待たれる朝寝かな

憶良ならこごみをいかにして食はん

ほととぎす磁石はいつも北を指す

ほととぎす尾上の松の雨雫

芍薬の花も莟も露にて

葉桜の隙間を騒ぐ宙の蒼

葉桜の隙間騒がし午後三時

長谷寺の若葉の映る念珠かな

駄菓子屋を町に見掛けし暮春かな

滴りを唇つけていただきぬ