◎トンボの今月の四句八苦 2014・5月

雑詠抄

 

椋鳥の気まま歩きや鴨足草

佃煮を買うて千住の薄暑かな

老鶯や叩きてみたき魚鼓下がる

食堂(じきどう)の韋駄天像や嫩葉寒

東司には東司の作法枇杷熟るる

立葵線路の脇を固めをり

薄暑薄暮空へと烏羽開く

立葵一から十へ立ち騒ぐ

若い衆のこよびの跳ねる祭笛

夏帽に全身森に隠れゐし

ロシア歌好きと応へる夏帽子

花空木凸凹道をぼこぼこと

いふなればこれぞ卯の花腐し

松風の草に揺れゐるかたつむり

佳き事は佳き言なりき螢籠

蕗の香や人の減りゆく隣組

房総に光遍き花茨

老鶯や砥部焼皿のレストラン

蕗の香や向う三軒両隣

夕薄暑来ぬもの豆腐屋紙芝居

レストラン難波茨の花の中

老鶯やワインセラーの南京錠

閻王と硝子越しなる若葉かな

くちなはの騒ぎ納まる抹茶かな

羽衣のごとくにありし蛇の衣

松籟や二本垂れゐる蛇の衣

われ思ふゆゑに吾あり木下闇

ささがにの衣通姫や木下闇

ゲーテはたシェークスピアや羽抜鶏

疑ひは人にありけり蛇の衣

墨滴のやがて形にほととぎす

ほととぎす紙へこぼるる筆の墨

翠嵐にものの輪生るる時鳥