◎今月のトンボの四句八苦 2014・6月

 

雑 詠 抄

 

竹皮を脱いで喜寿など過ぎにけり

蔵町を一連隊の捕虫網

大方はこころを飾る半夏生

短夜の夢の果てたるバクダッド

短夜の地震のひと揺れ果てにけり

蚊はいつもううんと云ふてゐるばかり

まづ影の出で来て会釈黐(もち)の花

鉄砲百合わやわやわやとをみな達

沢瀉(おもだか)や長靴履きの人のくる

鮎に塩ふりて焼かるる青山河

花氷少年の手を離さざる

一階の香水香る花氷

新聞を映してをれる金魚玉

立ち上がる時に鹿の子のたたら踏み

眉毛などなけれど鹿の子の二つの眼

栗の花今をはるかに少年期

天霽れて生れてきたるさくらんぼ

簗へ鮎とんぼ返りをしてをれり

桜桃へ夜のくる明りとどきけり

十薬の花を活けたる喫茶店

行行子遊ぶ子供の声聞こゆ

眼下には泰山木の花の駅

十薬を刈りし匂ひのまま会える

ほととぎす門跡院の油塀

尼寺の閂なりし蛇の衣

台本もアドリブもあり螢狩

まづ己が影の入りゆく木下闇

大暑くる抜身一刀あるごとく

老鶯や北指し磁石収まれり

思はざる素足よろこぶひと日なり

又別の己見てゐる半夏生

コミュニティバスの着きたる羽抜鶏

哲学者貌をしてゐる羽抜鶏