◎今月の四苦八句       2014・8月

トンボの四句八句 当月雑詠抄  

桐一葉吊るし売りゐる鼠捕り

寅さんの寺と云はるる桐一葉

毒はまた薬なりけり曼珠沙華

秋暑し宿題などは持たぬけど

秋風に乗りて日月届きけり

白旗の宮へひぐらし声つくす

鎌倉に眠る阿仏尼萩白し

雨過ぎし萩のトンネルくぐりけり

露草に裾を濡らせる女の子

行きかけてへくそかずらへ返しけり

秋の日の影湖つけるビルの壁

待針のめどなきことも秋の風

ひたひたとざわめく町やボラ跳ねる

噴水の穂先の届く秋の空

足許へまはり込みにし桐一葉

見も知らぬ猫と道連れ雁来紅

鳳仙花むかしを今に向島

秋雲の高さ違えて行き交へる

夜も青き空の残れる百日紅

午後の日の剣先見せて秋の来る

中空の無色透明百日紅

秋の風齢を重くかさねつつ

秋蟬の行方を追へる心の眼

秋蟬の終の一声聞き洩らす

なにゆゑの一句生み継ぐ秋の雲

秋雲を終日見てゐる気なりけり

初秋の午後の日差しの無色かな

色の無き風くる午後の山野かな

色の無き風や聞こえる水の音

青眼は迎へる心灸花

また一ついのちに響く黒葡萄

こころの帆高くかかげるいわし雲

産土の神の巨木の秋の蟬

摺鉦の指もからだも秋祭

秋雲の一句ととなりて下りてくる

澄む水の傍への濁る些事起る

みの虫と親しく風を過ごしゐる

蟷螂の斧ふりあげてをり親し

澄む秋の丹後に聞きし機の音

蛇穴へ残してゆきし空の色

たそがれの色を繰り出す葉鶏頭

みの虫や巨人広島デーゲーム