◎2014・9月 今月の四苦八句

当月雑詠抄


入口に風船葛切手買ふ

八つ裂きの身の一片なりし茸飯

水底に都あるとぞ水の秋

秋声やひと立ち騒ぐ向う岸

見てあれば陰に見えくる芭蕉かな

毬踏みてつまみだしたるものや栗

冷まじや一句一句に真向へば

禅寺の屋根へて木の実落ちにけり

邯鄲や邯鄲の夢に更けゆける

鈴虫の仕切れる夜の更けゆけり

鈴虫や釘いっぽんを雨合羽

天高し図体廃品回収車

秋晴や亀と並びて盆の窪

魚屋の笊の銭入見えず秋

大都会ビルに贁けじとゐのこづち

実柘榴や猛犬注意の門構へ

朝寒の猫のポーズの背を伸ばす

身に入むや美空ひばりと同い歳

待針に孔(めど)なきことも秋の空

流れつつ水輪拡がる胡桃落つ

埃立つ立ちゐる音も豊の秋

蟷螂の斧を挙げゐる溶岩(らば)の上

思はざる場所に出くはす榠樝の実

石切の石のよろこぶ水の秋

煙突は火葬場なりき花芒

迷ひゐる道に居れども天高し

わが家へ到来物の曼珠沙華

へうたんのおのがじしなる姿なり

ひとの眼にさらされながら鮎落ちる

先へ行くひと振りかへる花野かな

丹田へ響きてきたる秋の声