◎今月の四苦八句    2015・11

雑詠抄

花の御所跡と石あり小六月

水仙や門跡寺院門閉ざす

掻き出せば湯気立ち昇る落葉かな

手を入れて落葉の下のあたたかし

流れゆく月日とどまれ返り花

二の酉の帰り立ち寄る目黄不動

普茶料理目当ての三の酉の来し

茶の花の垣根の内の乳母車

行き交へるトラックの風冬に入る

あの人かの人もみな冬の顔

喫茶去と矢印ありし石蕗の花

八橋を渡りて行けば返り花

生れ地にいまも住まひし返り花

狐火を信じる顔をして笑ふ

小春日や腹をかかへて妊婦行く

雑木山小春日和の翳を生む

足の指三つは名無し三の酉

迷ひゐる道にはあらぢ冬紅葉

小春日や母ゐし話柄に及びけり

影もまた冬の明りとなりにけり

枯山を背中に負うて返りけり

枯山へ眼鏡の紳士入り行けり

翼もて空をさえぎる冬烏

全棟の明りのつきて冬の雨

丸ビルも新丸ビルも冬夕焼

大手町界隈冬の雨上る

北風に先を超さるる大手門

気象庁消防庁やスワン来る

鴛鴦のゆく鏡の水を割りながら

初冬の行く先々を赤信号

丼を抱へ蕎麦食う冬紅葉

また一つ誤算に焚火うらおもて

呼鈴の鳴りて人ゐる花八つ手

頬桁を風の過ぎゆき返り花

初冬の路上はみ出す赤きもの

枯葉舞ふ地に着くまでを美しく

舞ひあがる枯葉と降りてくる枯葉

雲の翳徐々に近づく枯葉かな

枯葉舞ふ奥に陽当る山のあり

白菜の萌黄の並ぶ夕餉かな

また位置を替えて枯葉の吹き溜