◎今月の四苦八句             2015・12月

雑詠抄

 

シベリアを発ちしと鶴の第一報

事始相撲の技の猫だまし

あたたかき冬となりたる像老いぬ

無視されて話題となりし炭の尉

山茶花や塩専売商電話1

やりのこすことは残して飾り買ふ

襟立ててコートへ丹田納めけり

北風に一歩一歩を押されける

北風や八郎啄木上野駅

北風や空に動かぬ夜の星

猫が餌ねだる声出す年の暮

今年まだ飾売見ぬ日を重ねけり

よく燃えて炭の香の立つ古本屋

遠出して北風を帰るなり

足許を雀飛び立つ北の風

喜怒哀楽年々淡し龍の玉

懐かしき人が和沢さ龍の玉

歳月の濃淡映る龍の玉

年の瀬やさよならはダンスのあとに

冬帽の飛びだしさうなダムサイト

バーブ佐竹三橋美智也や冬の星

敷松葉左近の桜は見えねども

敷松葉猫の渡りて行きにけり

縁なきと思うてをれど聖夜待つ

鉢二つポインセチアの色違ふ

ポインセチア信用金庫を飾りけり

黄金に輝く馬体冬の朝

遊ぶ子の声こそ宝年の暮

白息を交し合ひゐる鮮魚店

息白く腹像もなく対しをり

どぜう屋の前まで行つて12月

12月なんだか損でもしたやうに

銭湯の話題に冬至及びけり

柚子一個もらつて帰る冬至かな

林檎湯につづきて冬至湯なりしかな

流木の出自うかがふ冬の浜

戸締りの雨戸に消えし息白く

大津絵のへうたんなまず12月

山内へ一歩這入れば笹子鳴く

忘れゐしことに気の付く笹子鳴く

笹鳴や油土塀と花頭窓

食うべゐて徐々にさみしくなる葛湯

恋心さめゆくやうな葛湯かな