◎今月の四苦八句             2015・04

抄 録


御砂踏みすませ来てゐる牡丹園

水馬と水を分け合ふ水すまし

水馬につつつつつつと遊びをり

夏蝶の進路まぎれもなく真直ぐ

竹皮を脱ぎて未来へ第一歩

筍を食うて身長伸びにけり

将門と縁深まる黒揚羽

泰山木越しに駅舎や列車着く

よく見えぬけれども泰山木ひらく

五月くる鳩豆売のもうをらず

五月くる鳩の踏む地を人の踏む

行き交へる蟻をあはれと見てをれる

触れ得もせず芍薬の蕾あり

初夏の項見せゐる乙女かな

方丈に玉虫の死ののここりけり

玉虫の羽の飛びくる緋毛氈

牡丹や古着売らるる大師寺

葉桜の無数の空の地に動く

四つ辻にナガミヒナゲシ佇立する

夏立つとわが誕生日すぐにあり

矢車のからからからと霊柩車

蜂虻も蛇も出そろふ平和かな

虻のくる午後を平和な観覧車

低空の虻来て列の乱れけり

赤レンガ倉庫へ虻の低く来る

新緑の奥へ奥へとごろた石

万緑やみるみるわれの小さくなる

新緑のゲーテの路へ入りにけり

鯉のぼり都電の止まる架線事故

粽解く未来の詰まつているごとく

鍬下ろす先にたかんなありにけり

たかんなを太郎次郎と呼びもして

八重桜北条菱のはらむ幕

こんなにもたくさんありて二輪草

人群るる二輪草群生地

葉桜の影の無数や東海道

鯉のぼり渡せる川やカヌー行く

門冠松の家なり鯉のぼり

春の行く写真の鑑真像とあう

葛籠あり八十八夜の日となれる

くるる落つ音して八十八夜かな