◎今月の四苦八句     2015・08月

雑詠抄


へうたんの形に己見てをりぬ

穴に入るものの残しし水引草

夕されば萩女郎花豆腐笛

桐一葉落ちてし未来始まれる

桐一葉落ちて気ままに風のまま

ひぐらしややよ胎内に居るごとし

キリシタン灯籠萩の乱れ咲き

また黄泉へひとりの行きし黒葡萄

首きゆくきゆくと鳴らして秋の立ちにけり

三秋の始めの一歩にまろびけり

色のなき風に山野の色増しぬ

門前に作務僧ふたり秋の立つ

温顔のきびしき姿虫の声

雛僧のつむりのそろふ木槿かな

九体仏まします色のなき風に

阿字池の平橋反橋赤とんぼ

枯山水九山八海赤とんぼ

桔梗や陶のテーブル陶の椅子

石ころの一つづつ影秋の風

鬼やんま後ろへ戻ることのなし

丸木橋渡る三歩へ鬼やんま

のら猫と顔を見合す木槿かな

萩叢に入りて己を隠しけり

飴細工仕上げまたるる遠花火

竹を伐る切なき音のつづきけり

新涼の鶴頸白磁と対しけり

施餓鬼会の五色の幡に風荒れる

一席の噺のありて御施餓鬼会

釣鐘の高さに秋の風の鳴る

門冠松の手入の腰手拭

近づけば松の手入の屈まる背

松手入地面に倒れラジオ鳴る

初秋のものの壊れる音ひびく

DVD三枚ほどの盆休

鯉の池けふから糸瓜加はれり

茣蓙敷きて糸瓜の棚の下もよし

曖昧に訃報のとどく糸瓜かな