◎今月の四苦八句        2015・1月

雑詠抄


一口と鐘を数へる梅の花

冬眠の虫へ電話の通づるか

寒明けるじゃんけんぽんの拳遊び

切絵図の佐久間町河岸寒蜆

締め切りの在る日放れず寒明ける

刺身にも妻も剣あり寒の果て

松籟や油土塀の霜柱

雪折の赤子のごとく匂ふなり

木々風の匂ひ立ち来る寒薄暮

笹鳴を諾ふ顔を合せあふ

探梅やつひぞ離れぬ緋毛氈

窓下の福寿草へとひとの寄る

白息を交しあひゐる男女かな

薄氷の風の容(かたち)をとどめけり

糞もまた羽毛もつけて寒卵

寒中の薄暮の風の立ちにけり

動かざるものに露坐仏日脚伸ぶ

枯山にいまを動かぬ雲の翳

風花へ日矢の射しこむ旧街道

煮凝をありがたがれる長寿眉

獅子舞も万歳もこぬ空っ風

女正月このごろ虚無僧なども来ず

寒柝の気息の進む風連れて

絶句する顔を見せゐる鉄砲鍋

すりこぎも当り鉢にも日脚伸ぶ

展示するへつつい見てゐる寒さかな

注連張りて裏面は陰の神なりし

きづかざるものに冬日の己が影

寒晴やそれぞれ己が影をもつ

寒晴や釣鐘いぼいぼごとに翳

ビル街の寒の息する道なりし

この辺り旧柳原土手寒雀

爪を剪る音にも寒の響きけり

日脚伸ぶ銭湯煙あげながら

寒紅のきつぱりと舞ひをれり