◎今月の四苦八句       2015・6月

当月抄

白南風の象舎もキリンも猿山も

白南風の小学校を吹きぬける

蟷螂の斧上げながら散らばれる

もとのその一とふものや雪の下

水無月の祓ひに投ず一千円

押入の中にありても浮いて来い

でで虫とともに未来をわかちあふ

くちなはや同じにあらず鍵と錠

山門の軒に一の字蛇の衣

わが家の居着きの蛇の衣かな

瀧へ行く道を先行く黒揚羽

生き方に花ある人と瀧を見る

馬の尻一匹二匹桑実る

見上げゐてなにやらゆかし女瀧

黒南風の火の見櫓の高梯子

額の花五重塔を支へをり

庭下駄の置かれてをりし半夏生

夕さればむらさき匂ふ梅雨の町

夏至の日の神保町の喫茶店

麦星と指さす人のをりにけり

日傘さす人うるはし植田道

僧なれば夏書の筆とぞ言いにけり

夏花摘むことなどやつてみてをりし

人去れば蚊遣のけむり立ち昇る

山国のその一角の花菖蒲

老鶯や倒木いくつ踏みて来し

白川村荻町なりし蛇を見ず

夏炉の間這入りて闇の間となれり

目の慣れて見えくる暦夏炉の間

媼らの三人寄ればかき氷


今月も不作