◎今月の四苦八句       2015・09

雑詠抄


立寄りし旗亭を飾る秋の草

吊橋の我を目指して秋の風

息深く空気吸ひ込む秋の雲

上と下雲の行き交ふ秋祭

長老の生真面目顔や秋祭

赤とんぼ10キロ行けば海に出づ

蜻蛉来てとんばう連れて去りにけり

蟷螂と顔を合わせる源氏山

蟷螂のくきくきくきと斧上げる

白萩の全身揺るる風の立つ

石ころの波紋広がる水の秋

みみず鳴く夕樹鷹夫と喜美子亡し

白粉の花あり菖蒲あやの路地

蟋蟀や久しぶりですこんにちは

雲は宇宙の奈辺松の風

松手入れ終りし松の風の音

門冠松と柿の実旧街道

稲稲架に稲の溢れ先見えぬ

色づきて柿となりたる薬医門

竜吐水引張り出さるる案山子展

鹿の鳴く声にこの世の更けにけり

秋水の流れ細めてをりにけり

秋水の広げて行ける河川敷

一袋ほどの胡桃の干されをり

馬が目を細めてをりぬ秋の風

秋の日や木歩もあやもをらぬなり

秋の虹業平橋に架かりゐる

紅白の萩の日照雨のきりもばし

誰と逢ふわけにもあらず露葎

落したる南瓜の割れて得る平和

薄原美女も白狐も隠れゐし

橋に来て釣瓶落しとなりにけり

逆光に人影映る薄原

雲割れて光射し来る曼珠沙華

秋風の野辺を一本卒塔婆立つ

露の玉加はり流れ加速する

人間も鳥も獣も秋白し

全身の映る鏡や秋の暮